WEB連載

フランスの親子まるごと支援

第11回

在宅支援の可能性と限界

もくじ

子ども家庭分野における在宅支援とは、親子が分離されることなく同居を続けながら、ソーシャルワーカーが家族に関わり、親子それぞれの課題解決を支えていく支援のあり方である。今回は、フランスにおける調査をもとに、在宅支援が持つ可能性と限界について紹介する。
筆者が首都圏で生活保護のケースワーカーとして働いていた頃、母子家庭の多い地域を担当していた。支援を続ける中で、家族の状況は必ずしも改善せず、むしろ悪化するケースもあった。(もっと家庭に寄り添った、手厚い在宅での支援があれば……)と感じていた。家族の状況が悪化しても、まるで本人たちの責任であるかのように扱われる場面もあり、ワーカーの中には「この家族にはできることを全部やった、もう担当替えの時期だ」と発言する者もいたが、状況が改善しないなら、福祉側の対応やワーカー自身の力量も問われるべきではないかと疑問が残った。こうした現場での悔しさを原点として、近年はフランスにおける在宅支援を中心に調査を続けている。

在宅支援の理念と枠組み——フランスの在宅支援は3段階構造

ヨーロッパでは、権利を根拠とした、包括的な予防の枠組みを重視する政策が各国の方向性であり(FRA, 2025)、 子どもの権利を守るという観点から見れば、親と子を引き離すことは、「最後の手段」と考えられている。日本、アメリカ、イギリスが虐待のリスク評価を中心とする子ども保護システムをとっているのに対し、ヨーロッパ各国をはじめとするフランスの制度は、虐待の有無を見極めることよりも、家族一人一人のニーズに応えることを重視した「家族中心のアプローチ」を採用している。そのため、問題が深刻化する前に行う予防的な支援や、家族を基盤とした支援の重要性が広く認識され、取り組まれている(UNICEF & Eurochild, 2022)。
フランスでは在宅支援は大きく3段階に分けられる。1段階目は問題がなくても誰でも利用できる専門職の派遣である。社会家庭専門員(TISF)という国家資格を持つ専門職が「家族支援、家庭支援、ソーシャルワーク」を行う。2段階目は日本でいう「要支援」で、心配がある子どもに対する支援だ。エデュケーターの国家資格を持つ専門職が、親子の継続的な支援を行う。主に家に通う在宅教育支援と、エデュケーターがいる日中受け入れ機関(SAJE)に子どもたちが週2~3回通う支援がある。3段階目は日本でいう「要保護」で、危険な状況に置かれた子どものもとにエデュケーターが週3回~毎日通う自宅措置(強化在宅教育支援)である。このような仕組みを用意することで、心配な状況や危険があっても親子が一緒に暮らしたまま状況を改善できるように支援している。1段階目の社会家庭専門員による支援は、心配がない場合は健康保険の範囲の数百円で利用でき、心配や危険がある場合は県の児童保護予算でまかなうので無料、2段階目と3段階目の支援も同様で無料である。
在宅教育支援は子ども1人につき1日17ユーロ(日本円で約3,100円)が県から民間である支援機関に支払われるので、ひと月96,000円、年間だと115万円になる。日本では地方でも親子分離で施設措置になると年間500万円かかるといわれている。かつ、親子ともに挫折を経験し、ダメージは先々まで及ぶ。予防的に状況悪化を防ぐ在宅支援の方が、人権を守ることができコストもかからない。福祉はコストではなく投資であるといわれている。

問題がなくても利用できる在宅支援

フランスの社会家庭専門員は民間の専門機関に所属している。親子側からは直接利用を依頼することはできず、産科病院、保健センター、福祉事務所などからプレスクリプト(処方)される。例えば「子どもが学校に度々遅刻するので、平日は毎日朝7時から9時まで社会家庭専門員が家庭に行き、子どもを起こし、朝ごはんを食べさせ、学校に送り、母の家事の手伝いをする」といった内容でプレスクリプトされる。プレスクリプター(福祉事務所など)、社会家庭専門員機関、家族の3者で最初の3か月や半年の目的を話し合い、契約書を作成して利用がスタートする。主に公的機関であるプレスクリプターは、親子側から不満があったら仲介や調整を行い、サービスが必要なくなるまで見届ける。見届けることで、プレスクリプターは民間機関(社会家庭専門員)の働きをよく知った上でより適切に家族にサービスを紹介できるようになる。
特に出産時に親子のどちらかに病気や障害がある場合や多胎児の場合は、ほぼ自動的にサービスが案内され利用される。社会家庭専門員は悪い扱いを減らしよい扱いを増やすことなどを養成課程で学んでいるが、教えるのではなく親と一緒にすることがポイントである。
日本でもヘルパーサービスなどが利用できるようになっているが、民間業者を親が選び利用するという形なので、母が利用を希望しても父が反対するなど、必要な家族ほど利用していないという事態も起きている。フランスは申請制度ではなく、第一次予防を担う専門職が必要に応じて「届ける」役割を担う。そのため、ソーシャルワーカーには「あの人が勧めるなら使ってみよう」と親が思えるような関係を形成し、サービスを届ける工夫が求められている。第一次予防とは、産科病院、保健センター、3才からの学校が支援をコーディネートすることである。胎児から16歳までの全ての子どもについて、子どもの権利が守られているかを確認する役割を担う。
子どもの権利について親任せにせず、国として守る仕組みにした上で、具体的に改善する方法を用意していることが大事な点だ。日本においてもこうした在宅支援に関する国の制度が増え、その実現を担う民間団体も増えている。組織化さえ工夫できたら必要があるところに届けていくことが実現するだろう。
フランスには「親をすることへの支援」専門機関があり、公的予算による運営なので無料で利用できる。ただし実施主体は民間団体が多く、貧困層の多い地域に支援が集中し、富裕層の多い地域では民間団体そのものが極端に少ないという偏りがある。全国で利用できる親SOS電話のような仕組みはあるものの、より力を入れるべき分野だ。親が無料でマッサージやエステを受けエデュケーターと話せる場所、子どもを預けてコンサートや演劇を観に行くなど、息抜きができる支援も存在する。しかし、筆者の近隣では、単発で子どもを無料の習い事に参加させ、その間に親が専門職に相談できる場がある程度で、選択肢は限られている。特に小学生の親を対象とした支援は十分とはいえず、拡充が必要だ。

子どもが育つには村1つ必要

第2段階目である在宅教育支援は、親が希望して利用することもできるが、大抵は子どもに心配がある場合に学校ソーシャルワーカーなどによって提案され開始される。全国どこでもニーズに応じて実施されている。山間部であっても誰もが学校に通えるのと同様である。児童保護分野では必要な支援を提供する責任は県にあり、財源は県で、家族は無料で利用できる。
そのため県は、市営住宅の建設などで子どもの増加が見込まれる場合、「この地域では180人の子どもが利用する可能性がある」と事前に見積もり、公募によって機関や人材を確保する。エデュケーター1人が担当するのは最大26人(約14家族)と県が定めており、必要が生じれば増員される。ニーズに基づく配置のため、年度末に過剰な担当を抱えることはなく、例外的に1~2件多く担当する場合は、別途契約と報酬が用意される。
「子どもに心配がある場合」とは、市民法375条において「健康、安全、モラルが危険に晒されているとき、身体的、愛情面、知的、社会的発達のための条件がリスクにさらされているとき、教育的支援が命令される」(市民法375条)と定義されている。具体的には、不登校や家出、親への反抗なども対象となる。親が支援に協力しない場合や、支援の効果が不十分な場合、状況が把握できない場合には、子どもの権利を守るため、子ども専門裁判官が支援を命じる。


「間違ったこと言わないか心配で……」
「私はどんなことも驚かない自信があります」
「そう?」
「それなら安心だけど」
絵:PAVO

◆ 在宅教育支援の実践と5つの柱 

筆者が観察した在宅教育支援(AEMO)実践の大きな柱について言及する。

  1. 子どもの「調子の悪さ」の背景にあるニーズへの注目
    在宅教育支援は、子どもの学習の遅れや落ち着きのなさといった「心配な症状(調子の悪さ)」をきっかけに始まるが、症状そのものの改善ではなく、まずは「子どもにとって必要なこと」を満たすこと(第9回参照)と背景の理解が重視される。「子どもにとって必要なこと」をどのように実現していくか親子と話し合い、具体的な方法を用意し、さらに、調子の悪さの背景について対話する機会を設け、親子それぞれ変化が起こせる機会をつくる。例えば「学校を休みがち」という症状があれば、背景にある両親間の葛藤や子どもの不安の理由を話し合い、解決の道筋を一緒に探す。
    エデュケーターは最初に会うときから「どういう場所が話しやすいですか? 事務所にいらっしゃいますか? ご家庭がいいですか? 行ってみたいカフェがありますか? 公園を散歩をするのでもいいですよ」と電話で提案する。子どもの好きな場所を散歩したり、一緒にレストランで昼食を食べたり、数人の子どもや親子を連れて遠足をしたり、さまざまな機会をつくる。例えば学校で問題行動を起こし退学になりそうだった女の子は母と仲が悪いことが課題であり、父母が離別と再同居を繰り返す状況があった。エデュケーターは女の子の行きたい場所を毎週一緒に歩き、ある日女の子は祖父母宅に住むことを決めた。女の子は新しい学校で順調に過ごし、半年がたったところで支援を終了した。
    フランスは心理に力を入れ対話が中心だ。一方、スイスやベルギーでは理学療法などストレスからの解放や心身の調整への働きかけについても学ぶなど、実際にはさまざまなアプローチ方法がある。フランスの対話中心の方法は、あまりに傷が深く話せない場合に変化を起こすのに何年もかかることがある。また、現実逃避中のティーンエイジャーにも有効ではないことがある。外部機関との連携で音楽療法、アニマルセラピー、アートセラピーなども使われることが増えているものの、不十分である。
     
  2. 「自分のために行動する力」の引き出しと言語化
    子どもが自分の状況を客観的に捉え、自らの人生を主体的に生きられるようになるプロセスを支える。しかし、実際には両親間の争いが解決しなかったり、親の精神疾患や知的障害による子どものニーズへの対応の難しさが改善されなかったりすることはある。それでも、子どもは翻弄され続けずに、自分の人生を築いていかなければならない。
    エデュケーターは感情の言語化を支える。子どもが「耐えている」状況から、自分の感情を言葉にし、自分が自分として「存在する」ステップに進むことができるよう、何を実現したいか話せる「中立的な場」を提供する。「自分の人生の主人公になる」という言い方もされるが、主体的な選択ができるように支える。「相手の船を一緒に漕ぐ」とも表現され、どこへ行きたいか決めるのは子どもや親本人であり、支援者はそれを聞いてしばらく一緒に漕ぐ役割だ。親子は自分の意思で決断し、行動する力を身につけていく。
    個々に適した機会をつくるのが支援者の腕の見せどころだ。例えば娘は進学したいが母は弟妹の世話や家事をさせたいので進学に反対しているという親子がいた。エデュケーターは「歴史に名を残した女性たち」という展覧会に親子を連れて行くことで、親子が喧嘩せず話す機会をつくった。
    週末里親やバカンス里親、キャンプも積極的に使われていた。例えば、いつも両親の顔色を伺い、言いたいことが言えない子どもがバカンスのたびに里親宅で過ごした。他の家庭を知ることで自分の親を批判的に捉えられるようになり、親に自分の希望を表現できるようになった。
     
  3. 「レジリエンスの後見人」としての専門職の役割
    子どもを育てるには村1つ必要といわれ、子育ての実践と役割を全て親に押し付けるのではなく、複数人で子どもを育てる環境をつくる。エデュケーターもその1人になるし、親戚や児童館など子どもの周りにある資源を開拓し頼れる人を複数つくれるようにすることが大切だ。信頼できる大人との継続的な関わりが、子どもの回復に決定的な役割を果たすことが分かっている。エデュケーターにとって、親と子どもから信頼される人になることは、非常に大事な役割を担うことである。親子がエデュケーターと「よい関係を築くことができる」経験ができれば、他でもいい関係を築いていきやすくなる。
    よい関係性を築くことで、安全なアタッチメントの再構築をする。家庭内に不安がある場合、子どもは自尊心を形成しにくいが、エデュケーターが「自分の成功を信じ続けてくれる大人」として関わることで、安全なアタッチメントを再構築し、逆境を乗り越える力(レジリエンス)を育てることができる。「社会的親」の役割とも言い、子どものことを気にかける大人が複数いる環境(エコシステム)を作ることで、子どもが安心して外の世界に挑戦していける、新しい行動パターンをつくっていける土壌を整えることになると考えられている。
    学校が親とよいコミュニケーションができていない場合など、子どもは親に忠誠心があるので学校の大人たちを頼りにくい。エデュケーターが親子のことをよく知っていることで子どもは家の難しいことも話しやすく、また学校と家族の仲介をして子どもが再び気持ちよく学校に通えるよう支える。
     
  4. 「外に開く」プロセス(文化的・社会的刺激)
    家庭内や画面(テレビ、ゲーム)の前で閉じこもっていた状態から、社会や他者との関わりを広げていく。教育的外出、外食、バカンスには公的な予算がつくので、キャンプや遠足、文化活動などを通じて、新しい人間関係や「消費ではない休暇」の過ごし方を経験できるようにする。このような機会を通して、子どもの好奇心や自尊心が育まれ、社会的なコード(振る舞い方)を習得し、他の価値観や文化にも開かれていく。また、集団での成功経験をする機会にもなる。同年代とのグループ活動をエデュケーターが支え、関係性における成功経験を積めるようにすることで、学校やさまざまな集団の中で自分の場所を見つけ、気持ちよく参加できるようにする。
    最初は話しすぎる、話さなさすぎる、誰かをばかにすることでしか人とつながれない、など課題がある子どもも多くいる。関係性や社会の中でのあり方について違う方法を身につけていく練習ができるようにする。
     
  5. 「歴史を書き直す」ことによるアイデンティティ形成の支え
    フランスでは、親子分離が行われた場合でも、裁判官の反対がなく子どもが望む限り、親子関係の再構築に取り組むことが重視されている。「暴力があった」場合に関係を断ち切るのではなく、子どもが安心して自分の家族史を理解し直せるよう支援が続けられ、再統合が目指される。子どもが自分にとって受け入れやすい歴史に言葉を置き換え、理解し直し、生きていけるよう家族の歴史について話す機会もつくる。
    例えば、父から母への暴力があり、母子が引っ越したケースでは、その後、子どもが母の新しいパートナーから暴力を受け、きょうだい間にもいじめがあった。父子の関係再構築に在宅教育支援がつき、エデュケーターの立ち会いのもと、月1回父子で過ごす時間が設けられ、子どもが父から愛情や教育を受けられるよう支えられた。
    また、親が家族の歴史を子どもに十分に伝えていない場合も少なくない。親が子どもに対し暴力について謝罪し、当時の状況や今後の努力を言葉にし、関係を築き直すことが支援の対象となる。エデュケーターは、子どもが「自分が悪かったから暴力を受けた」「よい子でなかったから親が別れた」といった誤った理解をしないよう支える。
    例えば「父はフランスでの滞在許可目的で子どもを望んだので、許可がとれないと分かるといなくなった」と説明していた母がいた。しかし、エデュケーターが父を見つけ出し、準備をした上で娘と再会する機会をつくり、恋愛関係があったこと、母の何を魅力だと感じていたか、別れたときは仕事がうまくいっていなくて父の人生自体が難しかったことなどを話した。子どもにとっては自身の歴史の受け止め方が変わる。
    「不登校の子どもに登校支援」など症状への対応ではなく、子どもの権利保障とウェルビーイングの実現が「子どもにとって必要なこと」を土台として目指され、包括的な対応であることが分かる。


「両親の調子はどう?」
「良くないよ。でも、なんで調子良くないかは分かったから!」
絵:PAVO

◆ 在宅支援のポイント整理

在宅教育支援の実践から見えてきた重要なポイントを以下に整理する。

  • ◎子どもの基本的なニーズの充足と権利の保障、平等の実現。機会をつくり、潜在力を引き出す。
  • ◎「子どもの権利の保障」や「親をすることへの支援」がチャリティや善意ではなく国の責任として全国どこでも実施されている。
  • ◎「行動する力」は支援を受ける受動的で弱い存在ではなく、本人の能動的で自立的な姿勢を支えるというスタンスと、主体性の尊重。補助的役割としてのサポート。
  • ◎指導や面談ではなく、具体的に支える方法を用意していること。
  • ◎エデュケーターは第三者として親子間、家族と学校などの機関との間の争いの仲介をする役割。
  • ◎よい関係性が築ける経験ができるための関わり、成功を信じ続ける、親と子どもを愛し続けるなど関係性自体が仕事の核になっている。
  • ◎自立とは自分で何でもできるようになることではなく、人間関係の質と量があり関わりの中で安心して生きていくことができるということ。
  • ◎社会を変革するソーシャルワークをすること。専門職は目の前の家族を支えるだけでなく、制度の不備を訴え、社会をよりよい方向に変革するアクションを起こす役割も担っている。信念を貫きたたかうことを「ミリタン」と呼ぶ。
    子どもや親が抱える困難を個人の責任とせずに、人間的な信頼関係を通じて一人一人の尊厳と主体性を取り戻していけるようにし、社会にも訴えるという働き方をしている。


フランスの在宅教育支援をもとに、日本に導入することができるアイデアとして、以下をあげたい。

  • ◎虐待予防にとどまらず「子どもにとって必要なこと」の保障、ニーズを基準にすること。
  • ◎子どもを1人の権利主体と捉え、子どものウェルビーイングと権利を守る方法を親が反対しても実現すること。
  • ◎「申請主義(プル型)」から「ニーズ主義(プッシュ型)」への転換。
    親権者による手続きが必要だと子どもにニーズがあっても支援が届かないことがある。例えば、不登校の状況があったら親が動くのを待つことなく、学校やこども家庭センターなど子どもの権利を保障する機関が解決まで見届け、親を支えること。
  • ◎継続研修による質の保障とポスト採用で異動がないこと。その仕事をしたい人が仕事をする体制づくり。  
  • ◎ 人的配置基準の明確化。月に5時間支援が必要な子どもであれば、26人の子どもを担当できることになる。10時間の場合は13人になる。  
  • ◎多職種チームによる対応にする。そのことでさまざまな視点からより包括的に家族を支えることができる。
在宅支援の限界と今後の課題

筆者の調査では、支援を受けている家庭のうち、2年間で半数が心配がなくなり支援を終了し、継続している家庭でも多くの子どもの調子が改善していた。一方で、フランスの在宅教育支援には限界もある。

  • 「心配」という基準は共有されているものの、長期的なウェルビーイングへの影響をどう判断するかには課題がある。
    親に精神疾患や知的障害がある場合「差し迫った危険」とは判断されない。しかし調査では、調子が良くなり支援が終了した子どもたちの多くが、親戚宅や職業訓練の寮など、親と同居しない生活へ移行していた。一方、親と同居を続けた子どもたちの中には、非行傾向が見られたり、18歳直前で障害サービスの手続きを行うケースが複数あった。進級でき、障害サービスの対象ではなかった子どもであっても、18歳以降の進学や就労に心配がある場合である。児童保護は18歳以降も更新可能だが、本人の希望がなければ支援は終了するので、困難な状況にあってもソーシャルワーカーの目が届かなくなる恐れがある。そのため、障害サービスの担当をつけ、継続的な支援を保障する対策が取られている。このように後になって「不十分な環境だった」と気づく事態が起こるのでは、子どもの成長を守れたとは言い難い。
     
  • 児童保護分野だけでは対応しきれない課題が複数ある。
    児童保護では、必要があれば裁判官の命令によって支援が行われ、「家族が協力しないから支援を終了する」ということはできない。親子に抵抗があっても、エデュケーターは関係性を築き変化を起こす役割を担う。一方、医療や障害分野では、裁判官の命令があっても「家族が支援を受ける命令」にとどまり、機関側に提供義務はない。そのため、親子が受診に来ないと打ち切られたり、障害サービスも利用しなければ枠を失ってしまう。結果として、医療が断続的になったり、障害サービスが中断される状況が起きる。
     
  • 支援を機能させるには、関係機関それぞれに人員が足り、正常な機能を果たしている必要がある。
    さらに、関係機関は連携し、一緒に支援を届ける必要がある。家庭訪問に障害担当のエデュケーターが同行したり、訪問医療で拒否があっても働きかけを続ける体制があれば、より効果的だろう。地域移行を進める中で、最も脆弱な人に支援が届かなくなることはあってはならない。

  • 在宅教育支援は1年半から3年ほどで子どもの調子が良くなることが多いが、親の状況は必ずしもよくなっていない。
    重い精神疾患、深刻な人間関係の解決には不十分である。2022年の法改正以降、在宅教育支援には別居親子の交流支援や家族セラピーを活用してより力を入れるよう求められているが、親の支援はいまだ不十分である。同じ機関内にこうしたサービスが用意されるなどの対応が望まれる。障害分野や精神科と密に連携し、本人が受診していなくても医師が継続的にフォローできるなどの体制が必要だ。
     
  • ニーズに応じた柔軟な対応が求められているとはいえ、従来の在宅教育支援は月5時間で計算しているので、十分な時間がとれるとは言い難い。
    これまでは裁判官が子ども1人につき月あたりの支援時間5時間(在宅教育支援)、10時間(集中在宅教育支援)、20時間(自宅措置または強化在宅教育支援)と判断し、それに応じて委託費が支払われていた。近年は「在宅教育支援一括対応(Mesure Unique)」を導入する県が増え、裁判官が在宅教育支援を命じた後、受け入れ機関が支援の強度を調整する仕組みとなっている。必要な時期には頻回に、安定すれば回数を減らすことができ、家族の状況が変わっても同じチームが継続して関われる点は利点である。一方で、機関側の運営や管理はより難しくなっている。

  • 状態が悪化する前の第一次予防を充実させることが重要である。
    スイスのように、心理士や言語聴覚士が学校に常駐し、保護者が予約をとり連れて行かなくても、ケアを日常生活の中で受けられれば問題の深刻化を防ぎやすい。一方、フランスでは学校の看護師や心理士、ソーシャルワーカーがフルタイムでいないことが多い。さらに欠員により1人の専門職あたりの担当校が増えると、在宅教育支援につながる時点で既に状況が悪化しているケースが増える。その分、子どものウェルビーイングを守れなかったことになる。ベルギーでは2016年の法律でエデュケーターを学校に配置している。子どもの権利保障のためにも第一次予防の強化は最優先課題である。
     
  • 誰もが生きやすい社会をつくるためには、困難やハンデがあっても自分の居場所があり、安心して生きられる社会が必要である。
    貧困や差別に対して連帯し、社会全体で取り組むことが求められる。
    幼少期から、暴力や貧困について語る機会を教育の中で重ねるとともに、脆弱な状況にある人々と関わる一人ひとりが、親子のアドボケイトとして声を社会に届けていく必要がある。生活が苦しくなると社会は右傾化しやすいが、現場に立つ人々が連帯し、抵抗していくことが重要だ。
課題を解決する

日中受け入れ機関は、心配のある子どもを対象に幼児・小学生・ティーンエイジャー向けに設けられており、在宅教育支援と同様にニーズに応じて利用できる。近年は子ども自身が主体的に通える点が重視され、優先的に活用されている。日本の「居場所」との違いは、児童保護の予防分野として県の予算で運営され、明確に問題解決を目的としている点である。利用期間は原則半年単位、最長でも1年半程度とされ、在宅教育支援と並行して利用されることもある。
パリ市では各区に日中受け入れ機関が配置されており、例えば19区では、子ども35人に対して専門職17人が配置されている。専門職の役割分担としては以下のようになっている。

  • ●エデュケーター
    親子の継続的サポートとケアのコーディネート
  • ●心理士
    ストレスコントロール、自尊心、不安、感情を言葉にして伝えられる練習、親子の対話
  • ●教員
    学校で過ごしやすいように授業中の態度や子ども同士の議論への参加など練習する
  • ●スポーツ担当エデュケーター
    食習慣、安全管理、リスク、スポーツ習慣について

その他にソーシャルワーカー、アートセラピスト、エスノサイコロジストなどがフルタイムではない形で入っている。
日中受け入れ機関によると、学校での態度が適切ではない、集中できない、言葉の暴力、身体的暴力、授業中に座っていられない、抜け出そうとする、授業を妨害する、友達とよい関係性を築けない場合などが対象となっている。問題行動は結果であって、それ自体が問題なのではない。教育が十分ニーズに適していなかった結果、学校で症状が出たという状況と考え、働きかけをする。
小中学生向けの日中受け入れ機関では、子どもたちは週数回から毎日、放課後に通所する。3~4人単位の課題が近い子どもを集めたグループでゲームをし、トラブルになりやすい状況で違う方法がとれることを習得したり、学ぶ楽しさを覚える活動をする。週末や休暇中には、専門職が親子やきょうだい、同年代の子ども同士で出かける活動を多く行い、さまざまなシチュエーションで親子双方に働きかけを行う。日中受け入れ機関のエデュケーターたちは学校の面談には毎回参加する。支援は親の希望で開始されることもあるが、多くは学校ソーシャルワーカーなどが「子どものよりよい成長のため」「子どもの可能性を最大限引き出すため」と提案し開始される。障害がある子どもは別のところが対応しており、日中受け入れ機関は学校、各区にある心理医療センター(CMP)、地域の家(日本の児童館のような場所)、学習支援機関、福祉事務所、家族支援を行っている在宅教育支援のような機関、医療などと協働する。

屋内, テーブル, 部屋, 椅子 が含まれている画像  自動的に生成された説明
(写真:パリ市日中受け入れ機関ホームページより)

危険な状況にある子どもに裁判官が命令する自宅措置については、また改めて紹介する。最後に、子どもが幸せに育つ社会を構築するにあたり、重要であると思う点を強調したい。

  • -子どもの権利を守るための福祉事業を公的予算で実施し、質の保障をする
  • - ニーズに応じて全国どこでも同じサービスが受けられるようにする
  • - 子どもは法的な個人として存在し、子どもが自分でサービスにアクセスできるようにする
  • - ソーシャルワークは専門職が担うことで質の保障をする
  • - 包括的(医療、社会、経済、教育、心理、愛情)に対応し、期間を明確にし、問題解決を目指す

【ツール】

【引用】

  • ・FRA (2025) « Towards integrated child protection systems », European Union Agency for Fundamental Rights.
  • ・UNICEF & Eurochild (2022), “Better data for better child protection systems in Europe: Mapping how data on children in alternative care are collected, analysed and published across 28 European countries”, Technical report of the datacare project.
子ども・若者向けツールとして日本語版の「暴力定規」も公開中!

暴力定規(日本語・地域保健版)

「暴力定規」(日本語・地域保健版)について詳しくはこちら

著者
安發明子(あわ・あきこ)
フランス子ども家庭福祉研究者。ソーシャルワーカー養成校AFRISパリ理事。 立命館大学大学院人間科学博士、EHESSフランス国立社会科学高等研究院健康社会政策学修士、社会学修士、一橋大学社会学学士。 首都圏で生活保護ワーカーとして勤務したのち2011年渡仏。 子どもが幸せに育つための文化の醸成に取り組んでいる。著作『一人ひとりに届ける福祉が支える フランスの子どもの育ちと家族』(2023)かもがわ出版、翻訳書『ターラの夢見た家族生活 親子まるごと支えるフランスの在宅教育支援』(2024)サウザンブックス、『NO!と言えるようになるための絵本』(2025)ゆまに書房。
公式サイト akikoawa.com

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