保健師のビタミン

多世代社会のあそびの力、おもちゃの力

第4話モンゴルの遊び力はすごい!

世界各国を旅していて、子どもの遊びで最も印象に残っているのはモンゴルだ。

「モンゴルの水を飲んだら、モンゴルの風習に従え」といわれているように、モンゴル人は民族の誇りと伝統文化を尊ぶ。

モンゴル最大のお祭りである「ナーダム」にも、「競馬」「射弓」「相撲」という、子どもたちをとりこにする遊びの伝統文化が根強く残る。

日本の幼児が補助輪をつけて自転車に乗る時期に、モンゴルの子どもたちは自由自在に馬を乗りこなして、大平原を馬に乗って颯爽と駆け抜ける。
その幼児の姿はまぶしいほど格好良い。

小さいときから馬に乗って、家畜の世話をしたり、競馬に出場したりすることは、子どもにとっては、「遊び力」の成果を見せる桧舞台となる。

モンゴルでは昔から、いわゆる「おもちゃ」といわれているものは極めて少ないため、限られた道具や自然物で遊びこなす力と、異年齢との関わりが豊かなのだ。石を並べたり、シャガイと呼ばれる家畜のくるぶしの骨を使って、幼児と児童がお手玉遊びやおはじき遊びに興じる。

パズル遊びの伝統も強く、木片のパーツを組み合わせて、一つの形を作り上げていく遊びも好む。それは、ばらばらのパーツをコンパクトにまとめ上げるという力が、遊牧民が年に3回ほど放牧地を移すときに、ゲル(テント)を解体して荷物を合理的にまとめ上げていくときに大きな意味を持ってくる。

遊園地やテーマパークがなければ楽しめない、テレビ画面に映し出さなければ遊べない、といった日本の子どもたちと比べると、自然物やシンプルな形から遊びを作り出すモンゴルの子どもたちの「遊び力」には頭が下がる。

遊びを通じて、子ども時代に獲得しておかなければならない創造力や知恵、人間との関係力が、モンゴル大平原の遊びにはたっぷり溢れている。

著者
多田千尋
芸術教育研究所所長、東京おもちゃ美術館館長、高齢者アクティビティ開発センター代表 NPO法人日本グッド・トイ委員会理事長。
1961年、東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、モスクワ大学系属プーシキン大学に留学。現在、全国3000人を越える玩具の専門家「おもちゃコンサルタント」の養成と、高齢者福祉のQOLの向上を唱えた「アクティビティディレクター」の資格認定制をスタート。専門はアクティビティケア論、福祉文化論、世代間交流論で、早稲田大学など多くの大学で教鞭をとる。
4月には、新宿区と文化協定を結び、東京の四谷で閉校となった小学校に「東京おもちゃ美術館」を開設。中野には、遊びとアートのラボラトリー「アート・ラボ」を開設し、子どもアートスクール、子育て学校、街中子育てサロン、おもちゃショップなどを展開する。
芸術教育研究所
東京おもちゃ美術館
高齢者アクティビティ開発センター

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