保健師のビタミン

多世代社会のあそびの力、おもちゃの力

第1話都会の廃校におもちゃ美術館

「平成19年の3月、神宮外苑の杜近く、100年の伝統を持つ四谷第四小学校がその役割を終えます。戦災を免れた貴重な建築遺産でもある校舎が来春に向け『東京おもちゃ美術館』に生まれ変わろうとしています」

これは、私が館長を務める東京おもちゃ美術館が、23年間続けた中野から四谷に移転して、新しいおもちゃのミュージアムを開設する為の設立基金募集のパンフレットの前文である。

この学校は、昭和八年に木造校舎が火災にあい、その翌々年に当時の東京市が威信をかけて造り上げたモデル校だ。

当時の校舎の建築物としては珍しい鉄筋コンクリートの建物で、東京市は設計をドイツ人建築家に依頼した。

しかしながら、昭和から平成に入り、在校生も減り続け、行政側からの統廃合問題も幾度となく浮上することが多くなっていた。

地元住民にとっては、小学校が閉校になることは我慢できても、この歴史的建造物である校舎だけは守り抜きたいといった思いは強かった。

そのような熱い思いから、おもちゃ美術館の誘致となった。

音楽室に木工玩具をふんだんに集め、「おもちゃの森林浴」を味わえる楽しさと癒しの空間を考えている。家庭科室は手作りおもちゃ工房をおき、江戸時代のからくりおもちゃから牛乳パックのリサイクル手作りおもちゃが楽しめる。

最上階の一般教室2部屋を使ったおもちゃの町は大小さまざまな小屋が建ち、一種独特な玩具の屋台村のような雰囲気がする空間だ。

さらに、館内には「おもちゃ病院」を始め、科学おもちゃルーム、ミュージアムショップなど魅力的なコーナーをふんだんに用意していきたい。

そして、この新ミュージアムには、二つのテーマを求めたい。

第一に、多世代による参画型ミュージアムの創設だ。中高生の仕事体験、大学生とのインターンシップやシニアボランティアの育成を通じて、入館する美術館から参加する美術館を目指したい。

第二に、子育て中の親や祖父母を対象とした三世代子育て支援ミュージアムを進めていきたい。私たちは「東京おもちゃ美術館」を多世代交流の館と名付けようと思っている。

子どもも楽しめ、お年寄りも自己実現が果たせる仕組みを、このミュージアムでチャレンジしていきたいと考えている。

著者
多田千尋
芸術教育研究所所長、東京おもちゃ美術館館長、高齢者アクティビティ開発センター代表 NPO法人日本グッド・トイ委員会理事長。
1961年、東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、モスクワ大学系属プーシキン大学に留学。現在、全国3000人を越える玩具の専門家「おもちゃコンサルタント」の養成と、高齢者福祉のQOLの向上を唱えた「アクティビティディレクター」の資格認定制をスタート。専門はアクティビティケア論、福祉文化論、世代間交流論で、早稲田大学など多くの大学で教鞭をとる。
4月には、新宿区と文化協定を結び、東京の四谷で閉校となった小学校に「東京おもちゃ美術館」を開設。中野には、遊びとアートのラボラトリー「アート・ラボ」を開設し、子どもアートスクール、子育て学校、街中子育てサロン、おもちゃショップなどを展開する。
芸術教育研究所
東京おもちゃ美術館
高齢者アクティビティ開発センター

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