保健師のビタミン

映画にみる保健活動のヒント

第2話「ふくし」って?

さて今週も、寅次郎の旅は続きます。
博(妹さくらの亭主)の母の訃報を旅先で聞いた寅さんは、葬式に駆け付け、博の父・瓢一郎(志村喬)を励まそうと居残ります。が、ある日の夕食後、例によって大学教授の父にしっとりと諭されます。

瓢一郎
「寅次郎君、旅の暮らしは楽しいかね」

寅次郎
「ええ、楽しゅうございますねぇ。…こっちは女房も子どももいないから身軽でいいですよ」
(寅次郎、鼻歌を唄い続ける。)

瓢一郎
「ねぇ君、ちょっとその唄やめなさい。…そう、あれはもう10年も昔のことだがね。(中略)旅先でバスに乗り遅れてね。田舎道を歩いているうちに日が暮れちまってね。心細く歩いていると、ポツンと一軒家の農家が立ってるんだ…」

寅次郎
「狐の話でしょう。別嬪(べっぴん)に化けた狐が肩かなんか叩いて…ちょっと旦那、なんて…」

瓢一郎
「そんな話じゃあない。…りんどうの花が庭いっぱいに咲いていてね、開けっ放した縁側から、灯りのついた茶の間で家族が食事をしているのが見える。まだ食事に来ない子どもがいるんだろう、母親が大きな声でその子どもの名前を呼ぶ声が聞こえる…。(中略)…庭一面に咲いた、りんどうの花、あかあかと灯りのついた茶の間、にぎやかに食事をする家族たち、私はその時、それが…それが本当の人間の生活ってもんじゃないかと…。ふとそう思ったら、急に涙が出てきちゃってね…人間は絶対に一人では生きていけない…。逆らっちゃいかん。人間は人間の運命に逆らっちゃいかん。そこに早く気付かないと不幸な一生を送ることになる。わかるね寅次郎君。わかるね…」

寅次郎
「へい、わかります。よっくわかります…」

第8作『男はつらいよ〈寅次郎恋歌〉』昭和46年の封切り作品です。

さて、私は児童福祉を推進する児童館の仕事をしています。いつも福祉って何だろうと考えてきました。子どもや地域と関わりをもつときには、難しいことはやさしく説明をしなければなりませんしねぇ。

児童館は遊びを大切にしますから、私は遊び心で「ふ・く・し」を、"ふだんの、くらしの、しあわせ"って訳しています。駄じゃれですが、実は奥が深いんです。共感してくれたら、あなたも使って下さい。

著者
鈴木一光
児童健全育成推進財団 常務理事・事務局長
他に、上智社会福祉専門学校、神奈川県立保健福祉大学の非常勤講師、『テレビ寺子屋』(フジTV系列放映)の講師を務める。また、平成19年より「厚労省 社会保障審議会福祉文化分科会 映像・メディア等委員会専門委員」に任ぜられる。
―主な著作―
・『児童福祉論-課題と実践-』(共著、中央法規出版株式会社 発行)
・『児童館 理論と実践 ENCYCLOPEDIA』(共著、児童健全育成推進財団 発行)
・『保育実習』保育科教科書シリーズ 第5巻(共著、聖公会出版 発行)
・『乳幼児・就学前児童保健マニュアル』(共著、〈株〉文光堂 発行)
・『福祉小噺』(児童健全育成推進財団 発行)

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