保健師のビタミン

ヘルスプロモーション的ほめ言葉

第7話行いをほめる!

さて、これから本格的に、相手の良いところを見つけてほめてみましょう!さあ、どんな良いところがあるのでしょうか?

え? 前回の面接より血液データは悪化しているし、体重は増えているし、タバコもやめていないし、ほめるところが見つからないって?

うーん、困りましたねー…。
確かに、時には、どこをほめればいいのか頭をひねってしまうこともあります。でも、大丈夫!こう考えてみましょう。

良いところを見つけるときに、相手の「今の状態」が、どうであるのかではなく、事実として、相手の方が行った「行動」に注目しましょう!つまり、いまある「いいところ」を探すのでなく、事実として、「行ったこと」の良さに眼をつけるのです。

“行いをほめる”とは、どういうことでしょう。
私たちは、得てして結果に注目しがちです。そのため「検査値が改善していないから」「たばこをやめていないから」「育児不安のおかあさんに相談日を紹介しても来ないから」だから「ほめるところがない」と思いがちです。

でも、ちょっと深呼吸。
もう一度、相手の話を思いだしてみましょう。

「おかしいなぁ、深酒は避けたんだけどなぁ」「昨日は歩いたけど…」「本数は減らしたのになぁ」「育児相談に行こうと思ったら、風邪ひいちゃって…」と、そっとつぶやいていませんでしたか?

確かにクライアントの様々な課題は、解決してはいません。しかし、それにむけて起こした行動を、例えささやかであっても、見過ごさないことです。

その人は、あなたに言われる前に、ダメな自分を十分に実感しているのです。自分で「ダメだ」と思っている時に、専門職の人が自分の良いところを見つけてほめてくれた。
その言葉は、必ず相手の心に届きます。

クライアントをほめる瞬間、それは、自分の専門職に誇りをもち、自分の価値を最高に活かせる時です。専門職としての自信をもって、その人を、心からほめましょう。

「深酒の誘惑に勝ったなんて、頑張りましたね。意志が固まってきたんですよね! では、次はどんなことなら、できそうですか」

「本数を減らせたんですね。やりましたね。何がきっかけだったか教えてくださいよ。」

「そうですか、育児相談に来る気持ちになってくれて、ありがとうございました。 不安を自分からなんとかしようと行動できるようになってきましたね。 次回も、来れそうですか? 良かった!じゃ、お待ちしていますね」

ほめるところは、しっかりとほめ、次の段階を一緒に考える。

ダメだと思っている自分を、もう一度、元気づけ、次に向って一歩、一歩、背中を押してくれる魔法の言葉。それが、ほめビタなのです。

著者
佐甲 隆
三重県立看護大学教授(公衆衛生・地域保健学)
小児科臨床医だったが米国留学の後、公衆衛生に転身。ヘルスプロモーション、保健活動マネジメント、保健師コンピテンシーに関心を持ちつつ、明るく楽しいナラティブな対話型公衆衛生を目指す。

保健師のビタミン 著者別一覧へ

ページトップへ