保健師のビタミン

園芸福祉で介護予防

第8話園芸福祉活動ケース紹介その2

前回に引き続き、見事な復活劇を果たされたSさんのお話です。

過去に数回、骨折やご病気などで入院し、長期間お休みをされることがありましたが、持ち前のガッツと明るさでその都度がんばって回復され、晴耕雨読舎の利用を再開してこられました。

過去幾度も苦境を乗り切り、不死鳥のようによみがえってこられるSさんでしたが、昨冬に再びご病気のため入院しました。
今回の入院は3カ月にもおよびました。その入院生活中にも、晴耕雨読舎のことを気にかけてくださり、「何とか良くなって、晴耕雨読舎に行きたい」と、ご家族や担当の看護師に伝えていたと言います。

長い入院のために体力も落ちてしまい、春の退院時には移動に車いす、さらに酸素ボンベが離せない状態になられました。もう家には帰れないんじゃないかと思うような時期もあったそうですが、ご家族の支えによって何とか家に帰ることができるようになりました。

「命が危ないような時期もあったけれど、その時に「晴耕雨読舎に行きたい」という気持ちが病気に打ち勝つ原動力になっていた」と後から担当の看護師さんに教えていただきました。
ケアマネージャーさんやご家族も、そういうSさんを見て「退院してからは、見に行くだけでも晴耕雨読舎に何とかして行かせてあげたい」と言ってサポートをしておられたそうです。

そんなSさんの熱意で、最初は到底無理と判断していたお医者様も、最後には「そんなにご本人が言うのなら」という感じで、晴耕雨読舎への外出だけは認めてくださるようになりました。
そして5月から、Sさんは2週間に1回、短時間ですが、娘さんの付き添いで晴耕雨読舎に来られることになりました。

Sさんにとって、晴耕雨読舎での時間は唯一の外出時間で好きなことをする時間です。体力的にたくさんのことができないSさんにとって、とても貴重な活動時間を晴耕雨読舎での時間に充ててくださるのです。

娘さんの付き添いで通所を再開されると聞いたとき、その大事な時間を過ごしていただくのに、私たちにどんなことができるのか、私たちスタッフは考えました。

話し合った結果、出てきた結論は、Sさんに充実した時間を過ごしていただくために「今までどおりいつもやってきたことを、いつもどおりやっていただこう。私たちはそのサポートにベストを尽くそう。」ということでした。いつもやってきたことというのは、土をいじることであり、野菜の手入れをすることであり、大工仕事をする“いつもの”園芸福祉活動です。

普段の生活のリズムにしっかりと入り込んだ、Sさんのやりたいこと、楽しいことをやっていただくことが、一番充実した時間の過ごし方になると判断しました。

Sさんが利用を再開されたとき、私たちスタッフ以上に喜んでいたのが金曜日の利用者の皆さんです。Sさんがやってこられるのを「今か、今か」と心待ちにし、Sさんが到着すると「良かったね~」「うれしいわ~」「思ったより元気そう!」「やっぱり大黒柱のSさんがいないとね!」と大歓迎でした。

Sさんは、再開当日から周りの心配をよそに、畑に野菜を植えまくりました。

再開後は体力的に継続は難しいのではないかと、家族も周囲も心配していましたが、利用後も体調に変化はなく、2週間に1回のペースを継続しておられます。
ご家族もご本人も心配しておられた「夏を乗り切れるか」という課題をクリアされたSさんは、来週も「いつもの活動」をしに、娘さんと一緒に来所の予定です。

(復活したSさん)

何気ない「いつもの活動」の中に大小さまざまな喜びと感動があるのが園芸福祉活動のすばらしいところです。

著者
石神洋一
特定非営利活動法人たかつき 主催
NPO法人日本園芸福祉普及協会理事、日本園芸療法協議会理事など
著書に「福祉のための農園芸活動―無理せずできる実践マニュアル」(農文協)がある。

保健師のビタミン 著者別一覧へ

ページトップへ