保健師のビタミン

園芸福祉で介護予防

第6話街かどデイハウス晴耕雨読舎での園芸福祉活動3

今回は、街かどデイハウス晴耕雨読舎の人気プログラムを紹介させていただきます。まず、一番人気があり継続的に行われているのが、自分の畑の世話です。利用者さんの「自分の区画で野菜を育て、収穫する」というシンプルな活動ですが、この活動が中心になっています。

深い意味を考えなくとも、単純に土にふれ、野菜を育て、収穫するのが楽しいのです。利用者の方は晴耕雨読舎に到着して車から降りると、何よりも先に自分の畑を見に行かれます。それほどに楽しみにしておられるのです。

もうひとつ、女性に人気があるのが「花摘み」です。晴耕雨読舎では、切り花として使える花をたくさん植えています。その花をいろいろな場所の花壇から摘んで集めて、花束にして持ち帰るのです。
ここで問題です。
利用者の方が花を持ち帰る目的ナンバー1は何でしょう?
正解は「仏花」です。
持ち帰られる花はほとんど仏壇の前に飾られているのです。それ以外の目的はないといっても過言ではないくらい、ほとんどの利用者さんがこのために花を摘んで行かれます。

花の使い道がはっきりしている以上、植える花はおのずと決まってきます。週1回の利用が基本の晴耕雨読舎で、求められるべき花の条件は「持って帰ってから1週間きれいな状態を保てること」。晴耕雨読舎スタッフは、利用者さんと相談しながら、この条件に見合う花を種まきから育てる計画を練ります。結果的に、花の選択は昔から家の周りに植えられてきた「なつかしい花」が中心となっています。秋であれば、センニチコウ、キク、コスモス、シュウメイギクなどが毎年の定番です。
6年前の開設当初は、横文字の変わった花を植えていたこともありましたが、利用者さんの生活にマッチした花を植えてくる中で、今のような形になりました。

今では当たり前のこれらの活動も、数年間の試行錯誤の中で失敗を繰り返しながらできあがってきたものです。

私たちNPO法人たかつきでは、今までに積み上げてきたこれらのノウハウを、他の福祉施設や病院などでも実践していただくお手伝いをする取り組みを進めており、最近埼玉県三郷市にあるデイサービスセンター「デイサロンみさと」と提携をはじめました。

デイサロンみさとでは、介護予防に園芸福祉を活用する取り組みがはじまっています。「月刊地域保健 11月号」で、その取り組みが紹介されます。お楽しみに。

著者
石神洋一
特定非営利活動法人たかつき 主催
zNPO法人日本園芸福祉普及協会理事、日本園芸療法協議会理事など
著書に「福祉のための農園芸活動―無理せずできる実践マニュアル」(農文協)がある。

保健師のビタミン 著者別一覧へ

ページトップへ