保健師のビタミン

園芸福祉で介護予防

第2話園芸福祉は介護予防にピッタリ

私が代表を務めるNPO法人たかつきでは、街かどデイハウス晴耕雨読舎(せいこううどくしゃ)という高齢者の介護予防施設を運営しています。
65歳以上で介護保険のサービスを受けていない、比較的お元気な方が対象で、市の委託事業として、地域高齢者の介護予防と生きがいづくりを目的に事業を行っています。

晴耕雨読舎では、2001年5月の開所から、春夏秋冬、風の日も、雨の日も、雪の日も、嵐の時も、園芸福祉活動を続けてきました。
6年間サービスを続けてきた結果、
「園芸福祉は介護予防にピッタリ」と断言できます。

園芸福祉活動には一般に、以下の8つの効果があると言われています。

  1. 生産的効用
  2. 経済的効用
  3. 環境的効用
  4. 心理的・生理的効用
  5. 社会的効用
  6. 教育的効用
  7. 身体的効用
  8. 精神的(人間的)効用
    (出典:園芸福祉入門)

活動の中ではどの効果も実感できていますが、このうち特に介護予防の効果となって現われているのは、社会的効用、身体的効用、精神的(人間的)効用の3つです。

≪社会的効用≫
人と人との間に植物が入ることで、コミュニケーションが自然に、そしてとても滑らかになります。
間にコスモスがあれば田舎の秋の思い出を、サツマイモがあれば戦時中の苦しい思い出を、名も知らない花があれば「この花なんヤロ?? きれいやわ~」と、話しが弾み、コミュニケーションが豊かになります。

≪身体的効用≫
もっともわかりやすい効果です。
畑まで移動する、土を耕す、種をまく、水やりをする、草を抜く、花を摘む。どの活動をとっても、園芸福祉にかかわることは、自ら身体を動かすことにつながっています。
楽しいから自然に身体を動かしそれが結果としてリハビリになっていることが園芸福祉の効果です。

≪精神的(人間的)効用≫
これは少し説明しにくい効果ですが、確かにあります。
そしてこれが一番重要です。
手足が不自由な方が杖をついて足を引きずりながらでも、肺が苦しい方が酸素ボンベをつけてでも、目が不自由な方が他の人の手を借りてでも農園芸作業をするのは、園芸福祉活動が自己重要感を満たし、やりがいや生きがいにつながる活動だからです。

園芸福祉活動は、命を育て、未来に期待する活動です。
他のレクリエーションとは違い、種をまいた瞬間から、命の重み(責任)を感じ、花咲く(美味しい)未来を期待します。
この「命のふれあい」と「未来への希望」が園芸福祉活動を意義あるものとし、自己重要感の充足や、やりがいにつながる活動とさせているのです。

「これが生きがいやわ~」
「週1回ここに来るのだけが楽しみ」
「ホント、ここに来たら元気になるわ」
「私が先週タネまいた○○どうなってるやろ??」
利用者さんがおっしゃるこの言葉が、すべてを証明しています。

意義ある活動を楽しみながら、心と身体が元気になる園芸福祉活動。
これは介護予防にピッタリなのです。


(写真:収穫の喜び)

著者
石神洋一
特定非営利活動法人たかつき 主催
NPO法人日本園芸福祉普及協会理事、日本園芸療法協議会理事など
著書に「福祉のための農園芸活動―無理せずできる実践マニュアル」(農文協)がある。

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