帰ってきた「閑話ケア」……ときどき「講演旅行記」
第20回 講演旅行記-愛知県 幸田町 4回目(通算 第149回)
愛知県額田郡幸田町(ぬかたぐんこうたちょう)。皆さんも読めるようになったかな。3年連続4回目の訪問であり、旅行記としては去年の10月訪問を書いた今年の1月以来である。
高校生向け、市民向け、勤労者向けとやったから、そろそろネタが無くなりそうなものだが、今度は支援者向けに精神の話を―という依頼。同一市町村で地元を除く最多は、岩手県岩泉町の5回があるが、それに次ぐ4回目である。
支援者って、だったら、精神とかも学んでいるんじゃないかと思ったが、例えば身体障害からそういった業界に入った人だと、精神はよく知らないなんて事もある。前回の線引きの話にも繋がるが、現場では簡単に線引きできないケースが沢山あるわけで、精神の問題を持った様々なケースを支援する上での話を、という依頼なわけだ。
連絡を取り合ううちに、事例検討を通して、という話になり、更に、事例を出したいという方が、相談支援事業所、生活支援センター、社会福祉協議会、保健センター、中部包括支援センター、生活困窮者支援―の6つという事になった。講演時間は2時間半。ちょっと普通は考えられないが、1事例15分を目安にすればできない事もないと考え、それでやってみる事にした。事例のレジュメは事前配布とし、当日の説明は最小限にとどめるようにお願いして、この方針が決定。私自身は保健師相手の事例検討の他、多職種相手の事例検討も含め、今までにおそらく数百回は助言者として参加していると思う。
なので、何とかなるんじゃないかなってね。
8月11日、山の日。埼玉は朝から小雨。行く先の愛知も終日雨予報。ま、それでも時々ある新幹線が止まっちゃうような大雨予報じゃなくて良かったと思いながら、東京駅10時半過ぎ発のひかり639号で豊橋へ。そして、名鉄の快速特急で東岡崎駅に向かう。
休日に講演したのかって? いやいや、これからうなぎを食べようというのだ。12:21東岡崎駅を降りるといつものU保健師のお出迎え。雨の予報だったのに雨は上がっている。
駅にはあのお方が馬上に居られた。
私の大好きな江戸時代の創始者、徳川家康の騎馬像である。ウナギ屋が12時半からの予約なのでゆっくり見られなかったが。
そして、撮影中の私を撮ったUさんの撮影。
相変わらずの悪趣味である。前期高齢者の美しくもない後ろ姿を写して、何が楽しいのだろうか…。
ま、というわけで、時々Uさん撮影の写真も入る。
お店はこちら。
カネミツと読む。日本刀の有名な刀工「備前長船兼光(びぜんおさふねかねみつ)」を連想させるが、関係はないだろう。この辺りは三河うなぎと言って、ウナギの養殖で有名な所。その中の代表格の店のひとつだ。何度もこの地に来ていながら、食べそこなっていた名物。今回は事前に予約してもらっていたわけ。
店には昨年度までUさんの上司だった I さんが先に来ていて、3人でうなぎを堪能。
これは I さんが召し上がった白焼御膳。
そしてこっちは私が食べたひつまぶし。
これは、名古屋辺りが発祥と言われている食べ方で、今はどこでも食べられるみたいだが、実は私はお店で食べた事がない。東京日本橋のアナゴ料理専門店で、アナゴを似たような食べ方で食した事があるのと、近頃はスーパーで「ひつまぶしの素」みたいなのが売っていて、自宅で試しにやってみた事があるだけだ。
三河うなぎは焼き方も特殊らしくて、関東風でも関西風でもないらしい。うたい文句では外はパリっとして中はフワっと、と書いてあるが、確かにその通りで、なかなかの美味であった。でも、うなぎそのものを味わうなら、Iさんの白焼か、うな重の方が良かったかも。
次の機会があれば、そうしよう。
今まで幸田町周辺の観光はUさんだけの案内だったが、今は異動して福祉課の仕事からは離れ、晴れ晴れした顔の地元民の I さんが、今回はお休み返上で見物に加わってくれた次第。
あ、講演? それはね、翌日の午前中です(;^_^A
そんなわけで、3人で次に向かったのは「滝山東照宮」。
ここ、2024年1月にも来たのだが、その時は修復中。それが終わったという事なので、あらためて訪ねたわけだ。
説明書きによれば三代将軍家光の命によって、1646年に完成したそうだ。そして、日光東照宮、静岡県の久能山東照宮(家康が亡くなって、最初に埋葬された所)と並ぶ「三大東照宮」なのだそうだ。
そしてお参り中のお2人。
なるほど、東照宮独特の雰囲気はある。最近、実は日光にも行っていて、次の写真は日光東照宮の内側から陽明門の方向を向き、撮影した軒先の写真だけど、
ね、規模は違うけど上のお2人のお参り写真と、黒と金の屋根の辺りの造りなんか、よく似ている。
また、しばらく前に久能山東照宮にも行っているが、
これも派手さは違うが、共通する雰囲気はある。
もうひとつ、東京の上野東照宮が、
で、何だか立派さというか派手さでは滝山が劣る印象があるが、家康生誕の地に近いとか、そういった事で「三大」なのだろうな。もっとも、別の東照宮を含めた「三大」説が、いくつかあるようだが。
幸田町の講演旅行なのに、幸田の北側の岡崎市での食事と観光…。そして、次に向かったのは幸田の西側の西尾市。抹茶の有名な産地であり三河うなぎの産地でもある。
向かった先は「西尾市岩瀬文庫」。西尾の実業家が私費で作り、戦後、市の施設となった所。
ここで、現在「大河ドラマ」で取り上げられている蔦谷重三郎(ツタヤジュウザブロウ)関連の展示をやっているという事で、江戸好きな私に合わせて選んでくれた訪問地。「蔦重(ツタジュウ)」の事は、江戸の庶民文化を開花させた立役者の一人として前からよく知っている。展示物の撮影については何も書かれていなかったので撮影しなかったが、ドラマの中にも出てきた「吉原細見『籬の花』(よしわらさいけん「まがきのはな」)」―吉原の観光案内みたいな本―の実物などが多数展示されていた。
江戸時代のくずし字は、それを読むための本を何冊か持っているが、学んだのはかなり前で最近は離れていたため、ほとんど読めなかったのが残念…。予習していけば良かった。
「蔦重」の付箋紙(右側)を記念に買う。
道の駅に立ち寄って土産を買い、抹茶のお店に寄って休憩。抹茶も好きだが、この時は冷たいものを頂く。
ご覧のように茶釜が各テーブルにあって、湯が沸いていた。こんなのは初めて。
そして、また岡崎市に戻って、懇親会。
燗? この真夏に? と思ったが、ここは懇親会にも参加する福祉課のMoさんの弟さんの店だそうだ。看板の文字には先客。
ミンミンゼミかな。夏でも、燗で勝負しようという心意気が素晴らしい。セミもそう思ったか。
料理も良く、今お勧めの燗酒とそれに合う料理―などというわがままな注文にも応じて頂き、美味しく楽しく過ごす。
あとね、他の料理も沢山写真撮ったけど、料理の名前とか忘れちゃって、しかも、燗酒とか、大事な物は写し忘れて…。中途半端な感じなので紹介はやめておく。懇親会は酒が入るので、いつも写真がおろそかになる。記念写真も撮ろうと言いながら、忘れたり…。
が、今回はたしかKさんの発案で、初めに記念写真を撮った。全員から掲載許可がおりた。
1回目の懇親会でもご一緒したMaさんと、子ども課のKさん、そして、Moさん、I さん、U保健師である。
どれが誰だか、当たるわけないか┓(´―`)┏
翌日12日。再びUさんのお迎えで幸田町役場に向かう。今回は役場の会議室が会場。
1階のカウンターには、こんなこけしが並んでいた。
彦左(ひこざ)! わかる人いるかな? 大久保彦左衛門の事だ。家康~家光までに仕えた戦国~江戸初期の旗本で、講談や時代劇では「天下のご意見番」として有名な御仁。「一心太助」という江戸っ子の魚屋と彦左衛門の話は、昔は何度となく映画にもなっていたと思う。その彦左衛門がこの辺りの領主だったのだ。
そう言えば、最初に幸田町に呼んで頂いた頃に調べた中に出てきていたが、すっかり忘れていた。ユーモラスなお姿に心が和む。
そして、やっとお仕事。演題は「精神疾患のある本人への理解と対応について―事例を通して学ぶ―」
ね、こう書くと、マトモでしょ。
配布したプログラムには、以下のような注意点も書いた。
- 1.多職種による事例検討の意義、注意点
- ・互いの守備範囲、相手の知識の範囲を知る→協力の大前提。
- ・その上で、どこまでが自分たちの領域か、相手の領域か、どの立場や職種がマネジメントするかなどを考えていく事が大切。
- ・要対協などはまさにそれを求められる場であるが、自分の守備範囲に固執して、押し付け合いという事もままある点に、注意が必要。
- ・業界用語は共通言語ではない事に注意。
例えば、CP=コンピューター(computer)、臨床心理士(Clinical Psychologist) 、 脳性麻痺(cerebral palsy)、クロルプロマジン(Chlorpromazine) 、 GH=グループホーム(Group Home)、幻聴(Gehörshalluzination)
- 2.自分の立場・職種・権限・個人としての適性などから、できる事は何か?
―を考えながら、 事例検討開始- ・やるべきこと?
- ・やった方が良いこと?
- ・やらなくても良いけど、余裕があれば出来そうなこと?
- ・やるべきではないこと?
- ・最低限必要なこと?
最初に、これらの事を説明して、事例検討開始というわけだ。
何か、いつもよりマトモな感じがするでしょ。でも、テーマと対象によってやり方は違って当たり前なだけで、始まってしまえばアドリブで話すのは同じで、私としてはあんまり変わらない。
ただ、事例検討会だから、私が「神の声」のように「これぞ正しいとらえ方」みたいな事を言っておしまいでは困る。参加者の発言を引き出す事で初めて参加者のものになるのだが、多少は参加者の発言もあったものの、さて、果たしてうまくいったと言えるかどうか…。いつものような無記名質問紙は、時間の関係で不採用。
12時、時間通りに無事終了。
終了後、前回の懇親会でご一緒し、今日は事例提供をしてくれたYoさんが声をかけてくれた。昨夜の店「燗太」の話になり、強く勧めておいた。また、Yuさんたち社協の方々もわざわざご挨拶に来て下さった。
後に送られてきたアンケートの集計では、事例を通してだったからわかりやすかったという声や、町の事例を通して他の機関の事を知る事が出来たといった感想が多かったか。事例数が多過ぎた弊害として、深掘り不足といった感想も頂き、ごもっともな話であるが、今回は冒頭に書いたように6事例の候補が出てしまい、どれかを切り捨てるのもどうかと思っての事。お許し頂きたい。
その後、昨夜の懇親会のKさんのお誘いで、「隠れ和厨房 巳土里」でのランチにUさんと向かう。良かった。これで幸田町の旅行記ネタができた。
Kさんは長い事保育園の先生をしていた方で、その関係で知り合った方が、民家を改造して一人で切り盛りしているというお店だ。
ん? お店? という感じでしょ。中も普通の民家っぽくて、畳の部屋で家族連れが食事をしている。
私たちは厨房のすぐ前の3人掛けのカウンター席に通された。
料理が、昨夜の「燗太」に続き、これまたおしゃれ。
最後のは、炉の上で石焼して頂く。なかなか工夫があって美味しかったが、Kさんのお誘いが無ければ知る事も無いような、まさに隠れた名店であった。
Kさんとお別れした後は再びUさんと蒲郡(がまごおり)に向かう。前回、「ガマニ塩湖」なる写真撮影に苦労した所の近くに「竹島水族館」というのがあって、深海の生き物の展示数が全国一だとか書いてあったので、それを見に行く事に。
到着―と思ったら、こちらは旧館で、入り口はその先の新館。
そんなに混んでないように見えるでしょ。ところが、外の駐車場もすごい状態だったし、中は大混雑! 子連れも多くて熱気ムンムン。ま、考えてみれば、平日とはいえお盆休み中だから当然の事か。
早速、深海生物のタカアシガニがお出迎え。
下から見上げる事ができる展示もあった。
混雑した中を歩き回ると、こんなのもいた。
カブトガニ。これ、展示に書いてあったかどうかわからないが、多分オス。
トゲの長さの違いなどが見分けるコツ。なんか、変な生き物ですよね。でも、面白い。
こんな手書きの表示もあってスタッフの熱意が伝わってきたが、
この中にいるだろうとテキトーに写した写真には、残念ながら、多分、写っていなかった(+_+)
努力の結果を紹介できず、スタッフさん、ごめんなさい。東北の太平洋岸では「ドンコ」と呼ばれて親しまれている美味しい魚だ。よくぞ、生きたまま連れて帰れたものだ。
他にも熱帯魚系や
三河湾の生物
オトヒメエビや
今や癒しの魚としても有名なチンアナゴなどもいた。
その後、ひと休みして、蒲郡駅から豊橋経由、新幹線で帰路へ。帰ってきたら埼玉は雨だったが、愛知では一粒の雨も見なかった。良かった。
水族館は、あまりにも混み過ぎているエリアには近づけもしなかったが、空いている時は飼育員に積極的に話しかけて欲しいという運営スタイルらしくて、またの機会があれば空いている時に訪れてみたいものだ。
ん? 三河うなぎの再挑戦に空いている水族館…。I さんの話では岡崎にもまだ、奥殿陣屋などステキそうな所があるし、現在改修工事で休館中の岡崎市美術博物館も行ってみたい。更にその周辺にもまだまだ魅力的な所はありそうだ。
5回目、あるかなぁ…。
「だから、自分で行け!」
という声が、沢山聞こえてきたような気がする。
そりゃ、一応、法人のような組織だけど、事実上は自営業みたいなものだから、いつ休んでも良いわけですよ。でもね、それだと、「あ、また休んで遊びに行ってる」って思われちゃうでしょ。
でもね、呼んでもらえると「講演に呼ばれたから仕方なく休んで、ついでに観光」みたいに見えるじゃないですか。