WEB連載

帰ってきた「閑話ケア」……ときどき「講演旅行記」

第3回講演旅行記―山形県山形市・新潟県十日町市 (通算 第132回?!)

あれ? 通算132回って???
前回が107回だったのに、何で急に増えた?
…と、そんな風に気づく方が果たしていらっしゃるかどうか…。
前回、数字の事で気づいた事があって、こう書いた。

あれ? 考えてみるとweb版の講演旅行記がちょうど20回あるから、雑誌と合わせて、本当は今回が127回目って事か?

そうなのだ。もともと、誌面での連載の中で「講演旅行記」も書いていたのだが、雑誌が月刊誌から隔月刊に変わって、旅行記ばかりの比率が高くなっては困るから、一足先にweb連載に移転していたのが「藤本さんの講演旅行記」というコーナー。

それが、今回、「閑話ケア」本編がwebに来たので分離していたのが元の姿に戻った。
そうなると、web版旅行記と合算して、今回が128回目になるんだなって、思っていた。
が…。
web版旅行記には、実は、番外編が4編あったのだ。「自転車日記」「穏やかな日々の記憶」「COVID騒動終息祈願」「自転車日記 2」。
つまり、雑誌105回+web24回=129回。その後に、今回の「帰ってきた」が始まって3回目だから、通算132回という事だ。 う~ん、一気に増えた気がするが、別にインチキをしたわけではない。


さて、久しぶりの講演旅行記。

4月初旬。相談室の「お問い合わせフォーム」に、新潟県津南町のO保健師からの問い合わせが来た。
「現在、新潟県看護協会十日町支部(保健師職能委員会)の役員をしており、今年度の研修会で藤本先生を講師にお迎えできないかと考えております」
2019年11月末に茨城県結城市に伺って以来の地方講演のご依頼…。3年半ぶりだ。
断る理由なんてどこにもなかった。

そして、今年4月中旬。今度は久々に遠方からお電話があった。
電話口のお相手は「山形県国保連」のSさん。
そんな所からの電話は相談依頼や苦情であるわけもないので、「山形県国保連」と聞いただけで、講演依頼とわかる。内容も期日もロクに聞かないままに、 「行きます!」
とお返事したように記憶している。

ご依頼の順番としては新潟、山形だが、先に伺ったのは山形県山形市。
そして、どちらも、何日かかけてじゃないと回れない程の沢山の観光資料を送って下さり、しかしながら実際には日帰りで、そばを食べ、博物館を見た…。

混乱しそうだが、まずは山形県からご紹介しよう。


7月11日火曜日。相談室を臨時休業にして、大宮から「つばさ131号」で山形駅に向かう。
山形県講演は2回目。 前の時は北西の庄内町で、羽田から飛行機だったが、今回は山形市。プライベートを含め、初めての山形新幹線である。福島から在来線を利用するタイプなので、普通車だけど片側2列のシート。

たった2時間ほどで山形に着いてしまった。

駅にはお電話をくださったSさんがお出迎え。駅構内には「花笠まつり」に向けて、市民の手作りの提灯が飾ってあった。

そのまま、駅構内の蕎麦屋に案内され、4人の偉い方と一緒にお蕎麦をご馳走になる。山形の名物の一つが蕎麦であって、普通に美味しかったが、4人の方のお話だと、駅構内の店だから万人受けするものだったね―と。もう少し特徴のある蕎麦もあるらしい。
会場は、やはりそのまま駅とつながっている「ホテルメトロポリタン山形」の一室。時間が早いので、少し徘徊する事にして、駅の様子を外から。

左側がホテル部分。
会場はこんな感じ。

今回の講演は、山形県国保連が事務局の役割で、主催団体は「山形県在宅保健活動者連絡協議会(いつわ会)」。平成13年に発足した会で、「いつわ」というのは5つの職種、保健師、助産師、看護師・准看護師、管理栄養士・栄養士、歯科衛生士―で構成された会で「5つの職種、5つの輪が、それぞれの能力をいかしながら、調和のとれる会にしていきたい」という意味の名前だそうだ。
調べてみると、こういった会が全国的にあるようだが、お呼びいただいたのは初めてであった。 また、私より年長者が多いという話で、今年9月から前期高齢者の私としては、なかなか珍しい集まりであった。
テーマは「最近笑っていますか?~毎日をイキイキと過ごすために~」で、援助者としてだけでなく、参加者ご自身の高齢者としての問題―という側面も含めて、話して欲しいとの事だった。
ま、いつも通り、それなりに話しておしまい。後でSさんが下さったメールでは「参加者からは、心が癒された、質疑応答等大変よかったと大好評でした」と。いつも皆さんお優しいので、こっちが救われる。


優しいと言えば、国保連のMさん(この方も名字だとSさんになるが、重なるのでお名前の方で)も、優しかった。事前にSさんに観光について「講演終了後、徒歩で回れる範囲を検討したいと思っております。候補があればご教示くださいませ」とメールでお願いしたのだが、しばらくすると、大量の資料が送られてきた。

しかも、中を開くとこんな感じ。

これを用意してくれたのがMさんだった。山のような資料に、ありがたいやら可笑しいやら、講演後のほんのわずかな時間しかないのに、最低1週間は観光できそうな資料であった。
更に、講演終了後、山形城跡の「霞城(かじょう)公園」に行こうと思っていたが、道がよくわからず、途中までお送り頂いた。あらためて、ありがとうございました(^.^)(-.-)(__)
少し雨が降ったりする日だったが、暑い日で、Mさんとお別れした直後、こんなヤツがいた。

ハシボソガラスだ。暑くって大口を開いて辛そうにしている。
「もうちょっとそっちに行ったら日陰があるんだから、せめて日陰に入りなよ」
と勧めたところ日陰に入ったが、それでも暑そうであった。

そして、霞城公園の入り口、大手門。

ここ、6個の車止めの柱とお城っぽい建物の間の左右に柵があるでしょう。この下が面白い。
お堀と山形新幹線などの線路が左右に通っているのだ。柵があって良い写真が撮れなかったのだが、こんな取り合わせは実に珍しいと思った。お堀端は桜の木のようで、その時期は、新幹線から格別な景色が見えそうだ。
中に入ると馬上の武将が勇ましい。

関ヶ原の合戦後、全国5位の57万石を治めた最上義光(もがみよしあき)だ。お城の広さも現在の公園よりかなり広大だったようだ。
そして、山形県立博物館。

右の自動車の向こう側には謎の物体。

近づくと「木像 縄文の女神」だと。この時点ではどこかで見たような気がするといった程度だったが、これの実物こそが、この博物館のメインであった。
自然史と文化などが混ぜこぜの博物館で、地方の博物館によくみられるパターン。これが、東京の上野だと自然科学は国立科学博物館、文化財中心は国立博物館と分かれる。
なので、詳しい説明は省略するが、こんな感じだ。

そして、メインが、

先ほどの木像の原型、国宝土偶「縄文の女神」である。

こんな解説もあって、頭の方をマジマジと見たり、

後姿を眺めたりしてみた。

不思議な感じはしたが縄文人の気持ちには届かなかった気がする。ハシボソガラスとなら、気持ちは通じた気がしたのに…。
他にも生き物の骨格標本の特別展もやっていたが、省略。
最上義光歴史館にも寄ってみたが、中は撮影禁止だった。

帰りは17時過ぎのつばさ154号で一杯やりながらの帰宅であった。

駅に直結した会場で、駅で昼食を頂き、土産物の買い物も駅で済んだから、2時間近く早く帰る事ができた計算になるが、やはり、寄り道してこそ、人生のような気がする。


7月30日、日曜日。今度は新潟県十日町市である。
十日町には、11年前の3月に一度話しに行った事がある。調べてみると「平成24年度乳幼児虐待予防研修会」で、「地域における養育支援と保健師の役割を考える」というテーマだったようだ。
その時の写真だ。

電車内からと会場の保健所の窓からの景色だが、これでも雪が少ないと言われた。
実はこの時は翌日に和歌山に行くという強行スケジュールだったが、和歌山ではすでに梅も終わっていた(そのあたりは2013年11月号に書いている)。
そんな十日町だが、今回は真夏。上越新幹線で大宮からまずは越後湯沢に。そして、ほくほく線で十日町に向かう。

西口がほくほく線の駅で、

東口がJRの駅という事になっている。

今回は、昼食の都合で、まず東口に降り、蕎麦屋に向かうのだが…。
その前に、こちらを見て欲しい。

日帰りにしては多過ぎるパンフの種類と付箋付きの丁寧な案内! 山形のデジャヴかと思うほどではないか。これを用意してくれたのは新潟県看護協会十日町支部、保健師職能委員長のNさん。
その大量の資料の中から、駅近くの昼食の店を選んだわけだ。
へぎそばのお店「繁蔵」にお邪魔する。

「へぎそば」というのは、布海苔(フノリ)という海藻をつなぎに使ったのど越しの良い蕎麦。この辺の名物である。ところが、メニューを見ると、へぎそば以外に普通に「ざるそば」などがある。
何が違うのかお店の方に尋ねたところ、中身のそばは全く同じなのだと。
そうか。そもそも「へぎそば」というのは「へぎ」に入っているからついた名前。へぎというのは説明が難しいが、平たい木の箱で、それに入れたものを「へぎそば」と呼んでいるという事だ。
納得し、野菜天ざるそばを頂く。

この左上の薬味、わかるかな。

普通、ワサビでしょう。それが、カラシなのだ。これは、前に講演旅行で新潟の小千谷に来た時に、確か教えてもらったのだが、もともとこの辺ではワサビが採れなかったかららしい。今では選べたり、 両方ついている店もあるらしいけど。
店内のお客さんが「あれ? カラシなんだね」と不思議がっていて、何だか優越感を感じた(;^_^A 美味しく頂いたが、天ぷらが大量でビックリ。しかも、ほんの少しだが、残してしまった事にも更にビックリ。普通の一人前が入らないって、やっぱり、歳をとってきたんだなぁ、と、つくづく実感した。 食後、駅前に戻りタクシーに乗る。目的地は大した距離じゃないから、普通なら歩くが、猛暑にはかなわない。向かった先は十日町市博物館。そう、山形同様、ここでも博物館だったのだ。

なかなかきれいな外観で新しそうだった。運転手さんに時間指定の迎えもお願いして、中に。 山形は国宝の土偶だったが、こちらは、国宝の「火焔型土器」がメイン。

ひとつだけじゃない。いろいろな形のが沢山ある。

触れられるレプリカもあった。これは山形の土偶にも同様の物があった。

それより、発掘復元作業が思い浮かぶような、こんな物もあった。

雪の重さを体験するという展示は独創的だったが、

山形と重なる展示もあって、後に区別できる自信がない(;^_^A

お願いしていた迎えのタクシーで会場に向かう。越後妻有文化ホール「段十ろう」という立派な建物。

だが、中に入ると「十日町市中央公民館」と書いてある。こんな立派な公民館は初めて見た気がする。
会場はこんな感じ。

テーマは「パーソナリティ障がいの理解と支援」。
終わった後はNさんからお土産にお酒を頂き、駅まで送って頂いて、帰路に。


それにしても、大量の資料と丁寧な付箋紙に始まり、蕎麦を食べて博物館を見る日帰りの旅―×2とは、 それはそれで、珍しいパターンであった。
コロナ騒動が沈静化して、今年度、すでに10回以上の講演が決まっている。気ぜわしいが、何だか楽しくなってきた。

著者
藤本裕明(ふじもと・ひろあき)
分類学上は霊長目ヒト科の♂。立場上は一応、心理カウンセラーに属する。自分の所の他、埼玉県川越市の岸病院・さいたま市の小原クリニックなどで40年以上の臨床経験があるが、年数だけで蓄積はおそらく無い。
それにしても暑い夏だった。山形も新潟も、イメージ的には北国なのだが、とんでもない。この時期、バリ島に滞在していた患者さんの話では、乾季のバリの方がはるかに心地良かったそうだ。来年の夏はバリ島に呼ばれたいものだ。
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