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「健やか親子21(第2次)」の進捗状況

厚生労働省は6月に「健やか親子21(第2次)」の中間評価等に関する検討会(座長=五十嵐隆国立成育医療研究センター理事長)を設置し、中間取りまとめに向けた議論を始めた。第1回、第2回の検討会の様子と、「健やか親子21(第2次)」の進捗状況を報告する。

「健やか親子21(第2次)」は3つの基盤課題と2つの重点課題、52の指標で構成される。基盤課題は、従来から取り組んできて引き続き改善が必要な課題や少子化・家族形態の多様化などを背景に出てきた新たな課題で、「切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策」を基盤課題A、「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策」を基盤課題B、これらを下支えする環境づくりを基盤課題Cとしている。重点課題は基盤課題A~Cの取り組みを一歩進めたもので、重点課題①「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」と重点課題②「妊娠期からの児童虐待防止対策」がある。これらの課題の解決のために、目標となる52の指標を設定している。

中間評価では52の指標を個別に分析し、達成状況を▼改善した(目標を達成した)▼改善した(目標に達していないが改善した)▼変わらない▼悪くなっている▼評価できない──の5段階で評価する。第2次計画策定後に設定した一部の指標については、中間評価や最終評価の目標が設定されていないため、改善傾向にある指標については、便宜的に「改善した(目標に達していないが改善した)」とする。また、計画策定時に最終評価時の目標が設定されていない指標および現時点で既に最終評価時の目標を達成した指標については、新たに最終目標値を設定することとしている。

第1回検討会(6月26日)から

■指標の技術的事項に係る修正案

事務局から以下のような「指標の技術的事項に係る修正案」が提示された。
基盤課題Aの指標5「妊娠中の妊婦の喫煙率」、指標6「育児期間中の両親の喫煙率」、指標7「妊娠中の妊婦の飲酒率」では、問診票の設問における回答者の呼称を「あなた(お母さん)」としているが、問診票の記入者が母親とは限らないため、呼称を「お子さんのお母さん」に修正する。

基盤課題Bの指標6「歯肉に炎症のある十代の割合」では、ベースライン値を「25・7%」としていたが、調査研究において再計算したところ、「25・5%」であったため、ベースライン値を「25・5%」に修正する。指標8「十代の飲酒率」は健康日本 21(第2次)の「未成年の飲酒」とベースライン値を一致させ、「中学3年 男子8・0% 女子9・1%」を「中学3年 男子10・5% 女子11・7%」に、「高校3年 男子21・0% 女子18・5%」を「高校3年 男子21・7% 女子19・9%」とする。指標9「朝食を欠食する子どもの割合」は、ベースライン値設定時のデータソースである「児童生徒の食事状況等調査」が現在実施されていないため、それに代わるデータソースとして文部科学省の「全国・学力学習状況調査」を使う。これに伴い策定時のベースライン値「小学5年 9・5% 中学2年 13・4%」は、データソース変更後に「小学6年 11・0% 中学3年 16・3%」となる。

重点課題①の指標2「育てにくさを感じたときに対処できる親の割合」は「健康水準の指標」のグループに入っているが、「健康行動の指標」のグループに修正する。以上の修正案は了承された。 ■基盤課題Aの進捗状況
基盤課題Aで「改善した(①目標を達成した)」は5指標、「改善した(②目標に達成していないが改善した)」は8指標だった。「悪くなっている」は指標15のうち「市町村のハイリスク児の早期訪問体制構築等に対する支援をしている県型保健所の割合」と、指標16「乳幼児健康診査事業を評価する体制がある市区町村の割合、市町村の乳幼児健康診査事業の評価体制構築への支援をしている県型保健所の割合」だった。

指標15の県型保健所が悪化した理由としては、「平成25年度から未熟児養育医療や未熟児訪問の実施主体が市町村に移譲されたことの影響」を挙げている。また、指標16が悪化した理由については、「乳幼児健康診査事業が個別健診として実施され、その場合の精度管理の困難さがあること、支援の必要な対象者のフォローアップの遅れなどが考えられる」と分析している。

議論の中で、島田真理恵構成員(公益社団法人日本助産師会会長、上智大学総合人間科学部看護学科教授)は、指標14「産後1か月でEPDS9点以上を示した人へのフォロー体制がある市区町村の割合」について、「EPDS9点以上へのフォローはハイリスクアプローチになるが、この指標ではハイリスクになる前段階のポピュレーションアプローチを頑張っている市区町村の姿が見えないことになる」と指摘した。山縣然太朗構成員(山梨大学大学院総合研究部社会医学域教授)は、「最近は父親の産後うつがクローズアップされている。今後はこうしたことも課題になる」と話し、EPDSに限らず視野を広げるべきとの見解を示した。

■基盤課題Bの進捗状況

基盤課題Bで唯一「悪くなっている」のは、指標9「朝食を欠食する子どもの割合」だった。理由については「親世代の欠食率の高さが、朝食がない家庭環境につながっていると考えられる」と分析している。なお、指標9のベースライン値は設定時とデータソースが変わったため、検討会に配布された資料では暫定評価が「評価できない」となっていたが、会議の中で指標の技術的事項に係る修正が了承されたため、「悪くなっている」に変更された。

第2回検討会(7月31日)から

■指標の技術的事項に係る修正案

初回に続き、事務局から以下のような「指標の技術的事項に係る修正案」が提示された。
基盤課題Aの指標9「小児救急電話相談(♯8000)を知っている親の割合」は、#8000事業の呼称の変更に伴い、子ども医療電話相談(♯8000)となる。また、直近値は平成30年母子保健課調査速報値を採用して、79・8%から82・5%に変更となる。指標10「子どものかかりつけ医(医師・歯科医師など)を持つ親の割合」も、同速報値により、〈医師〉3、4か月児 78・4%が77・8%に、3歳児 90・6%が89・8%に、〈歯科医師〉3歳児 49・8% が48・8%に変更となる。
重点課題②の指標2「子どもを虐待していると思われる親の割合」は、ベースライン後の調査で、以下の設問の①~⑦にあてはまる場合にカウントしているが、設問と指標が一致していないとの指摘があったため、指標名を「体罰や暴言等によらない子育てをしている親の割合」に変更し、⑧の「いずれにも該当しない」場合にカウントする。

【設問】
①しつけのし過ぎがあった
②感情的に叩いた
③乳幼児だけを家に残して外出した
④長時間食事を与えなかった
⑤感情的な言葉で怒鳴った
⑥子どもの口をふさいだ
⑦子どもを激しく揺さぶった
⑧いずれにも該当しない

変更を反映した場合のベースライン値は、3、4か月児 97・4%、1歳6か月児 94・1%、3歳児 89・8%となる。なお、指標名の変更に伴い、「健康水準の指標」から「健康行動の指標」に変更となる。

重点課題②の指標10「要保護児童対策地域協議会の実務者会議、若しくはケース検討会議に、産婦人科医療機関の関係職種(産婦人科医又は看護師や助産師)が参画している市区町村の割合」は、ベースライン値の算出に、指標にある以外の団体が含まれていたため、ベースライン値を14・8%から12・9%に変更する。また、調査対象が要保護児童対策地域協議会のみであるため、指標名を「要保護児童対策地域協議会に産婦人科医療機関が参画している市区町村の割合」に変更する。
修正案については構成員の間でおおむね了承されたが、重点課題②の指標2については、安部計彦構成員(西南学院大学人間科学部社会福祉学科教授)から、「乳幼児健診の項目を参考にするのであれば、時期を乳幼児期に限るべきではないか」との意見があり、指標2の名称を「乳幼児期に体罰や暴言等によらない子育てをしている親の割合」とすることに決まった。

■基盤課題C、重点課題①②の進捗状況  

基盤課題Cで、「改善した(①目標を達成した)」は4指標だった。そのうち、「この地域で子育てをしたいと思う親の割合」はベースライン値より3・4ポイント上昇した。理由としては、ソーシャルキャピタルの向上や物理的環境の充実が影響している可能性があると分析している。「変わらない」は1指標で、「悪くなっている」指標はなかった。また、指標6、7、8についてはベースラインと調査方法が異なるため「評価できない」としている。

重点課題①で唯一「悪くなっている」のは、指標4「発達障害を知っている国民の割合」だった。ベースライン値より約15ポイント悪化したが、直近値の調査方法はベースライン設定時と異なっており、(発達障害という)「言葉だけは知っていた」は、ベースライン値より微増していた。

重点課題②で「悪くなっている」のは、指標4「児童虐待防止法で国民に求められた児童虐待の通告義務を知っている国民の割合」と指標9「特定妊婦、要支援家庭、要保護家庭等支援の必要な親に対して、グループ活動等による支援(市町村への支援も含む)をする体制がある県型保健所の割合」の2指標だった。なお、指標1「児童虐待による死亡数」は「『改善した』とするのは現状とかけ離れているなどの異論が出たため、「評価できない」に変更となった。

この日は事務局から「健やか親子21(第2次)最終評価目標の再設定」の資料が提示された。計画策定時に最終評価時の目標が設定されていない指標や、現時点で既に最終評価時の目標を達成したかおおむね達成した指標に対して再設定したものだが、「朝食を欠食する子どもの割合」の再設定値に対して構成員の間で意見が分かれたため、次回(8月30日)に引き続き議論することになった。

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