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「一般介護予防事業の推進方策に関する検討会」で中間とりまとめの骨子案を提示

7月19日、厚生労働省の「一般介護予防事業の推進方策に関する検討会」(座長=遠藤久夫国立社会保障・人口問題研究所所長)の3回目の会合が開かれ、事務局の示した中間とりまとめ骨子案について意見を交わした。

「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」は、昨年12月の「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議の報告書」を受け、今後、一般介護予防事業等に求められる機能などについて検討するため、今年の5月27日に設置された。初回は構成員が自由に意見を述べ、2回目にあたる前回は4つの自治体から一般介護予防事業の取り組み事例が報告された。この日の会合では、これまでの意見などを踏まえ、論点を(1)一般介護予防事業等に今後求められる機能(2)専門職の関与の方策等(3)PDCA サイクルに沿った推進方策――の3つに整理した中間とりまとめ骨子案が提示された。

(1)一般介護予防事業等に今後求められる機能

ここでは「通いの場」の定義や実態、参加促進の方策などをまとめている。通いの場の数や参加率は増加傾向にあり、平成29年度の参加率は4.9%となっているが、その一方で介護予防担当部局が把握している以外にもスポーツや生涯学習などに関する取り組みが自治体内で進んでいる。企業や社会福祉協議会などのさまざまな主体と連携した取り組みもある。そうしたことから、通いの場の定義によっては実数がかなり増えるのではないかとの指摘もあり、用語の整理や実態把握が課題となっていた。また、介護予防ボランティア等にポイントを付与する取り組みが各地で進められており、利用者としての参加だけではなく、ボランティアなど支える側での参加も検討課題として上がっている。

これらの状況を踏まえ骨子案では、「例示の追加や類型化を含む通いの場の定義の整理」「多様な主体と連携した取り組みを進める体制の検討」、参加促進のための「ポイント付与の取り組みのさらなる推進」「有償ボランティアの検討」などを今後の方向性として示している。

(2)専門職の関与の方策等

介護が必要となる原因には認知症、脳血管疾患、骨折・転倒、関節疾患などが多く、生活習慣病予防・重症化予防などの保健事業との連携が求められる。また、平成27年度に始まった地域リハビリテーション活動支援事業では、市町村から医師、看護師、保健師、理学療法士などを通いの場などに派遣するなど、専門職との連携が進んでいる。今年の5月22日に公布された「医療保険制度の適正かつ効果的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」に基づく改正介護保険法などにも、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施における医療専門職の関与の重要性が明記された。

以上のことから、「医療専門職との連携の推進」「専門的な知見を活用したプログラムの実施などの具体的な連携方策の検討」「通いの場への定期的な医療専門職等の関与や地域リハビリテーション活動支援事業の活用促進」などを今後の方向性として示した。

(3)PDCA サイクルに沿った推進方策

検討会では、「通いの場の効果や成果を図る指標がない」といった指摘や、「PDCAサイクルに沿った取り組みを進めることが重要」などの意見が出されていた。また、地域支援事業実施要綱には、「一般介護予防事業を含め総合事業全体を評価することが望ましい」とある。しかし、総合事業実施の効果の点検・評価を行っている市町村は3割に満たないのが現状だ。

こられのことから、「PDCAサイクルに沿った取り組みの推進」「評価に使用可能なデータに関するシステムの活用方策の検討」を今後の方向性として示した。また、保険者機能強化推進交付金には介護予防に関する指標が設けられていることから、それを視野に入れつつ検討を進めることを提案している。

骨子案に対する構成員の意見

中間取りまとめの方向性は、構成員の間で概ね妥当とされたが、細かい点ではさまざまな意見が出た。

論点(1)の通いの場の定義や実態に関することでは、そもそも通いの場の名称が一般には普及していないとの指摘があった。近藤克則構成員(千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門教授、国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学評価研究部長)は「住民からは『通いの場』という言葉を聞いたことはない。比較的通りがいいいのは『サロン』だと思うが、どういう名称が良いかについては試行錯誤しつつ見つけていくしかないのではないか」と意見を述べた。安藤伸樹構成員(全国健康保健協会理事長)は名称の公募を提案した。岡島さおり構成員(公益社団法人日本看護協会常任理事)は、通いの場のメニューでは運動機能の回復だけでなく、生活能力の維持・向上、人との交流や社会参加の回復を目指すことが重要であるとして「通いの場の例示の中に生活そのものに焦点を当てたものも含めてはどうか」と提言した。

ポイント付与については、近藤尚己構成員(東京大学大学院医学系研究科健康教育・社会学分野准教授)が、「それによって通いの場の参加が増えたというエビデンスはない」と、参加促進に結びつけることには慎重な姿勢を見せた。その上で、「ポイント付与は個人の参加へのインセンティブのひとつになるが、個人のデータを収集することで通いの場の効果検証にも使える。また、多様な組織連携を生むことにつながり、企業の参入も促せる」と、インセンティブ以外の活用法にも着目すべきとした。

論点(2)の専門職の関与については、構成員の意見から一筋縄にはいかない論点であることが浮き彫りになった。近藤尚己構成員は「生活困窮者や孤立している人は、受診の際に医師がサロンにつなぐだけでは『医師に見捨てられた』と思ってしまうこともある。つなぐ役割、つなぎ方について考える必要がある」と述べ、参考としてイギリスのリンクワーカー制度について触れた。リンクワーカーは精神的なサポートなどをする専門職で、医師の処方に基づいて本人を社会資源につなげ伴走する役割を担うという。一方、専門職に頼りすぎる弊害を危惧する声もあった。近藤克則構成員は、「通いの場に専門職が力を入れすぎると、住民主体を掲げているにもかかわらず、専門職依存になってしまうリスクがある」と指摘し、「中間とりまとめの文言では、『専門職による上手な間接支援』という書き方もあるのではないか」と述べた。岡島構成員は、一定の専門職が濃厚に支援し続けるのは難しいとして、「スポット的にプッシュする、ノウハウ伝達後には住民の自主性に任せる、効果評価のときに応援支援する」という要所要所における関与が現実的であるとした。また、市町村の保健師については「事業の企画・運営、専門職の活用、事業への組み入れや予算の確保に関与すべきと考えている」と述べた。

論点(3)における評価の問題については、辻一郎座長代理(東北大学大学院医学系研究科教授)が「総合事業実施効果の点検・評価を行っている市町村が3割に満たないのは、評価の仕方が分からないのと、必要性を感じないからだ」と分析。その上で、「各市町村の取り組みをスコアリングしたり、ランキングしたりして、費用対効果を見える化し、やる気を起こさせるような仕組みが大事。国はこうした一連の流れをつくってほしい」と求めた。近藤克則構成員は今後の方向性の中で提示している「評価に使用可能なデータに関するシステムの活用」をするにしても、基盤となるデータに不備があると指摘。「現状の介護保険総合データベースでは個人を追跡できず、KDBにはニーズ調査の器がない。後期高齢者医療の問診には期待しているが、受診率が4割くらいだと地域の代表性のあるデータとして分析できない。いずれも中途半端で、効果評価に必要な条件が欠落している」と述べ、基礎データのあり方についても検討を求めた。

次回の検討会は8月7日に開催され、引き続き中間とりまとめ案について議論する。

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