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「デジタル活用共生社会実現会議」が初会合

11月15日、総務大臣政務官と厚生労働大臣政務官主宰の「デジタル活用共生社会実現会議」が開かれた。ICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)の利活用によるインクルーシブな社会の実現に向け、関係者が支援策や普及啓発策について意見交換し、年度末の最終報告取りまとめを目指す。

わが国は2040年に高齢者人口がピークを迎え、生産年齢人口が減少し、社会を支える「人」の重要性が増していく。総務省は今年6月、ICTを利活用して年齢、性別、障害の有無、国籍等に関わりなく、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ豊かな人生を享受できる、インクルーシブな社会の構築を目指す「スマートインクルージョン構想」を公表した。これを踏まえ、「デジタル活用共生社会実現会議」ではICTの利活用による支援策や社会の意識改革・普及啓発のあり方について関係者が意見を交換、年度末の報告書の取りまとめを目指す。会議の下には、デジタル活用支援員(仮称)や地域ICT倶楽部などについて検討する「ICT地域コミュニティ創造部会」と、障害者などの日常生活に役立つIoT(Internet of Things、モノのインターネット)やAIの先端技術の開発・実証などを検討する「ICTアクセシビリティ確保部会」が置かれる。構成員は以下のとおり(敬称略)。座長には村井純構成員が就いた。

・浅川 智恵子(IBM フェロー、IBM トーマス・J・ワトソン研究所)
・荒木 泰臣 (嘉島町長熊本県)
・石川 准 (静岡県立大学国際関係学部 教授、東京大学先端科学技術研究センター 特任教授)
・内永 ゆか子(NPO 法人 J-Win 理事長)
・打浪 文子 (淑徳大学短期大学部こども学科 准教授)
・大杉 豊 (筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター 教授)
・此本 臣吾 (株式会社野村総合研究所 代表取締役社長)
・小宮山 宏 (株式会社三菱総合研究所 理事長)
・竹中 ナミ (社会福祉法人プロップ・ステーション 理事長)
・都竹 淳也 (飛騨市長)
・根本 勝則 (一般社団法人日本経済団体連合会 専務理事)
・松本 純夫 (独立行政法人東京医療センター 名誉院長)
・村井 純 (慶應義塾大学環境情報学部 教授)=座長
・山脇 啓造 (明治大学国際日本学部 教授)
・若宮 正子 (NPO 法人 ブロードバンドスクール協会 理事)

この日は、IBMの技術者で全盲の浅川智恵子構成員が「AIとアクセシビリティ」について発表した。障害者の情報アクセスやコミュニケーション向上に資する技術の研究開発をリードしてきた浅川構成員は、「AI技術の進展で、コンピューターが人間の認知能力を補う時代が既に始まっている」とし、スマートフォンを使った視覚障害者のための屋内高度ナビゲーションシステム(Nav Cog)を紹介した。既に大学キャンパス、博物館、ショッピングモールで試行され、実用化に近づいているという。さらに音声で空港の搭乗ゲートを案内し、飛行機の発着遅れの表示なども読み上げてくれる“インテリジェントな旅のお供”AIスーツケースを紹介した。

一方で浅川氏は、AIに学習させるデータが偏っているために生じる「AIバイアス」の問題も指摘。例として、肌の色が違うと反応しない顔認証システムを挙げた。白人男性のデータを元に作成したこのシステムは、アフリカ系アメリカ人の顔は認識しなかったが、白いマスクを付けると認識したという。また、SNSの書き込みを元に学習したAIが、火災で焼け落ちる家の写真について「素晴らしい景色だ!壮観だ!」と的外れな説明文を生成した例も挙げた。浅川構成員は「AI技術は社会の映し鏡といわれている。多様性のある企業が競争力のあるAIを生み出すことができ、多様性のある社会が正しいAIを生み出すことができる」と話した。

初回会合ということで、構成員一人一人が意見を述べた。石川構成員は「欧米のアクセシビリティは法制度を背景に進んできた経緯がある。2020年のオリパラに向けて、わが国でも情報分野のアクセシビリティを進めるための制度的な基盤を整備してほしい」と求めた。打浪構成員は「知的障害者は軽度な場合は1人で出歩くことも多いが、道に迷ってしまうこともあり、先ほど発表のあったNav Cogなどは非常に便利で、彼らの世界を変える可能性がある。狭いターゲットに向けて開発されたものも共有できるものがあるのではないか」と話した。竹中構成員は「AIスーツケースの発表を聞いて、車椅子の自動運転も可能になるのではないかと思った」と感想を述べた。

デジタル活用共生社会実現会議は、今後2つの部会を並行して走らせながら、12月に中間報告、来年3月には最終報告の取りまとめを目指している。

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