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難病施策を知り実践報告で学び合う ~東京都医学総合研究所公開セミナー~

6月12日、東京都医学総合研究所で夏のセミナー「難病施策と保健活動 ―今、保健師だからできること―」が開かれた。全国から約100名が参加した。

厚生労働省の中越瑞紀氏(健康局難病対策課)は、難病対策の経緯、難病法の概要、最近のトピックスなどについて講演。旧事業の特定疾患治療研究事業の補助率は、予算の範囲内で2分の1だったが、都道府県の超過負担が拡大し、さらに要件を満たしても助成の対象でない疾患の存在なども出てきたことから、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)の策定へとつながった経緯を話した。また、難病対策地域協議会で小児慢性特定疾患の医療機関と連携しているところは3割に過ぎないと報告し、「小児期は親が決めていた治療も成人後は本人が選択し意思決定できるようにする必要があるが、患者を支援する体制が不十分」と述べた。

東京都医学総合研究所の中山優季氏は、厚生労働科学研究費(西澤研究班)の調査票を用いたアンケート調査の結果を報告。男女比、年齢構成、ADL区分(自立、一部介助、全介助)などは従来調査とほぼ同じような傾向だった一方で、疾患の種類は1995(平成7)年の36から、難病法施行後の2015(平成27)年には330と9・1倍に増え、患者数も3倍以上に増えたと話した。

結果から見える難病患者の療養像では、神経系難病のほかに、見た目からは分かりづらく認知度の低い希少疾患が増え、時代や社会情勢の変化に伴い支援ニーズも多様化していることが浮き彫りになった。就労割合は近年上がってきているが、服薬・治療によるものであり、経過措置終了後に軽症と判定されると助成対象から外れるため、その後の生活に経済的不安を感じるとの声が目立ったという。一方で、早期に診断がつくことで家族や勤務先の理解が得やすくなったという声もあり、中山氏は、「生の声を集めることで、社会の理解と共助につなげることが重要」と話した。

川村佐和子氏(聖隷クリストファー大学大学院)は、講演「難病の在宅医療と保健活動への期待」の中で、自身の半世紀にわたる難病看護活動を振り返った。50年前は神経系の専門病院がなく、難病患者は医療・福祉・教育の対象外で、診断もつかず病気が進行するに任せて亡くなり、家族は社会の偏見と戦いながら〝素人の力で〟患者を守っていたという。

川村氏は自身が関わった、あるALS患者と家族への支援を振り返りながら、「ケアには人手と技術が要る」「家族の生活や人生にも影響を及ぼす」「身体的苦痛を軽減し社会的孤立を防ぐ」「家族とともにホッとする時間をつくる」など、難病ケアのポイントを説いた。また、会場の参加者には、「訪問看護制度が整ったことで保健師が遠くなってしまったという患者の声を聞く。決してそんなことはないということを患者にも伝わるように、地域を見る、つなぐ、作る取り組みを進めてほしい」と呼びかけた。

東京都医学総合研究所の小倉朗子氏は、厚生労働科学研究で行われたアンケート調査の結果から、難病対策地域協議会(以下、協議会)の設置の進捗状況などを報告した。結果をみると、29年度は前年度に比べて協議会が増加していたが、都道府県では約9割が協議会を設置しているのに対し、保健所設置市・特別区では85自治体のうち3割強にとどまった。また、協議会の有無により、訪問相談員育成事業、医療相談事業、訪問相談指導事業などの実施状況に明らかな差が出ていた。保健師研修を実施している都道府県は、回答した38件中17件(44・7%)だった。また、研修について「必要性あり」との回答が大多数を占めたが、実際にはそのニーズは満たされていなかった。理由として、予算の打ち切りで研修への派遣が中止となっていること、都道府県では体系的に実施が困難であることなどがあった。小倉氏は、「難病法の目的は適切な医療の確保と、療養生活の質の維持向上にある。地域の支援体制について協議会を活用した難病保健活動の重要性は高い」と話し、より一層の推進を訴えた。

各地の取り組み事例では、2か所から昨年の夏のセミナーで学んだことと、それを生かしたこの1年間の実践について報告があった。

滋賀県草津保健所の浅村絵里氏は、昨年のセミナーで、個別支援としては事例検討により対象者や家族の課題整理、援助の目標や具体的な支援方法を学ぶことができ、支援の目的が明確になったと話した。また、災害対策としては、セミナー後にアンケート調査を実施して地域の現状を分析、難病患者の9割以上が在宅療養生活を送っていることが分かり、災害時避難行動要支援者数を確認したという。今年度は、人工呼吸器装着患者の全例で災害時個別支援計画を立案する予定とのことだ。

名古屋市保健所東保健センターの磯部多恵氏は、個別支援から地域課題を見出して施策化すること、難病支援が包括的に行われることを学んだという。地域に戻ってからは、他の地域の取り組みも参考に、名古屋市独自の福祉サービスを盛り込んだ難病患者と家族のサポートブックを作成。また、保健師連絡協議会で、個別支援のあり方を検討するとともに個別支援ツールの作成や支援の標準化、保健師の役割の明確化を図り、難病支援の苦手意識をなくすよう、体制を整えているという。相談事業としては、数の多い神経系難病に偏ることなく、希少性難病についての講演会も年に8回開き、名古屋市難病対策地域支援ネットワーク会議(難病対策地域協議会)では関係機関との情報・課題共有を図り、個別支援から地域診断、施策化へ向けて連絡を密にしていると報告した。

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