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アルコール対策の課題・情報を共有し実施体制を考える ~時事通信社自治体実務セミナーから~

5月21日、東京の時事通信ホールにて、同社主催のセミナー「アルコール健康障害対策と地域行政の役割 ~行政と関連機関の協力・連携の具体的事例から学ぶ~」が開催され、自治体担当者向けに行政説明、アルコール依存症の最新治療、被災地のアルコール問題支援などに関する講演が行われた。

日本におけるアルコール依存症者数は、約107万人(生涯有病者数)といわれ、健康問題だけでなく、社会問題としても深刻な状況となっている。現在、国を挙げた対策が進められており、都道府県においては都道府県アルコール健康障害対策推進計画の策定が求められている。

この日のセミナーは都道府県計画の担当者・関係者を対象に、アルコール対策の課題・情報などを共有し、計画策定や実施体制の構築について学ぶことを目的に開かれた。

「国のアルコール健康対策の取組みについて」で講演した厚生労働省の溝口晃壮氏(社会援護局 障害保健福祉部 企画課 アルコール健康障害対策推進室 室長補佐)は、日本人が消費するアルコールの総量は年々減っているものの、多量飲酒による健康障害やアルコール依存症の発症、それに付随する家庭内暴力やDV、飲酒運転、未成年や妊婦の飲酒など、健康、社会問題としては深刻な状況にあると述べた。一方で日本は酒に寛容な社会であること、「アルコール問題は個人の問題」とする世間のイメージが問題を助長していることなどに触れ、社会全体でアルコール問題に取り組むべきであると強調した。

都道府県アルコール健康障害対策推進計画の策定状況については、直近の数字として、平成29年度までに策定済みが27、今年度(平成30年度)に策定予定が15であると報告した。

「アルコール依存症の治療の現在と未来」をテーマに講演した樋口進氏(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長)は、アルコール依存症の概要、治療法、再発の問題、生存率などについて詳しく述べた。久里浜医療センターの依存症患者を対象にした調査によれば、退院10年後には約半数が亡くなったという。また、周囲への悪影響も大きいことから、特に家族への対策が必要であると説いた。

医療における最大の課題は、アルコール依存症の受診率の向上だという。依存症は、他の精神疾患と比べ治療につながるケースが圧倒的に少なく、日本では107万人の依存症の人のうち治療を受けているのはたったの4万に過ぎない。こうしたトリートメントギャップを埋めるため、従来の治療方針である「断酒」だけでなく、「減酒(ただし、ある一定の患者に限る)」に導く方法も始まっているとして、久里浜医療ンターの「減酒外来」ついて紹介した。

被災地からの報告「地域支援者への災害復興におけるサポート」で講演した東北会病院の鈴木俊博氏(リカバリー支援部長)は、災害支援におけるアルコール依存症対策として教育、啓発、再発防止などさまざまなものに取り組む中で、最も力を入れているのは「支援者支援」であると述べた。アルコール依存症患者を含む被災者を支援する「支援員」は、緊急雇用対策で雇用された一般被災住民であるため、技術指導研修やメンタルサポートは不可欠なのだという。

そのほか、ショートセッション「アルコール関連問題啓発ポスターデザイナーより」では、株式会社サン・アドの大友美有紀氏が内閣府で制作した「アルコール関連問題啓発週間」用のポスターデザインを紹介。世代や男女問わず広くアルコール問題に関心を持ってもらうためには、「特定の一人を責めるようなメッセージではなく、問題をニュートラルに伝えていくこと」と強調した。また、一昔前のアルコール問題といえば中高年男性のイメージが強かったが、「最近は女性の増加が深刻化しているため、ポスターの男女比率は同数にしたほうがよい」とアドバイスした。

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