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【ニュース】第10回健康日本21(第二次)推進専門委員会で中間評価報告書の骨子案について議論

9月6日、厚生労働省の第10回健康日本21(第二次)推進専門委員会(座長=辻一郎東北大学大学院医学系研究科教授)が開かれた。健康日本21(第二次)の目標設定の見直しについて意見交換したほか、中間評価報告書の骨子案について検討を加えた。

目標の設定について

健康日本21(第二次)の具体的な目標項目は53項目。そのうち目標設定時に準拠した計画などがその後に改訂されたり、中間評価の実績値で既に目標達成したりしているものもある。この日の会合では、これら見直しが必要な項目について、事務局の提示した新たな目標などをもとに議論を交わした。

目標設定時に準拠した計画などで、その後改訂がなされたものには、がん対策推進基本計画、医療費適正化計画、自殺総合対策大綱、健やか親子21がある。別表第三《社会生活を営むために必要な機能の維持・向上に関する目標》の《こころの健康》の《自殺者の減少》は、前の自殺総合対策大綱に準拠して平成28年の目標19.4(人口10万人当たり)としていたが、平成27年の実績値が18.5と既に目標達成している。そのため事務局は、新たな自殺対策大綱に合わせた目標として、「平成38年までに、自殺死亡率を平成27年と比べて30%以上減少:自殺者13.0以下(人口10万人当たり)」を提示した。これに対して山之内芳雄委員(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所所長補佐、精神保健計画研究部長)は、新たな自殺総合対策大綱では自殺をメンタルヘルスの問題としてだけでなく社会・経済的な要因も重視していることを挙げ、「健康日本21の中では自殺を『こころの指標』(メンタルヘルス)としているので、少し(実情に)合わなくなってきている。メンタルヘルスに関する自殺対策の指標は参考指標とすることも考えられるのではないか」と意見を述べた。

別表第四《健康を支え、守るための社会環境の整備に関する目標》の《健康づくりに関する活動に取り組み、自発的に情報発信を行う企業登録数の増加、スマートライフプロジェクトの参加企業数》については、目標の3,000社に対し、既に3,751社(平成28年)と目標を達成している。事務局は次の目標案として、平成25年から28年の増加傾向の延長線上で平成34年に7,000社という数字を提示した。曽根智史委員(国立保健医療科学院次長)は「増加傾向を直線的に伸ばして7,000社としているが根拠は何か。また、健康経営なども含めて総合的に見ることが可能なのか」と質問した。それに対して事務局は、「(スマートライフプロジェクトは)健康経営などで企業が前向きに取り組んでいるが、データを分析したところ会社が対象だと勘違いしている自治体もあり、県でも参加していないところがあった。スマートライフプロジェクトの対象には自治体、団体も含まれるので、しっかり事業の内容を説明していきたい」と話し、企業の登録数が増えるなかでも、まだ自治体などへの周知が必要であるとの認識を示した。

中間評価報告書の骨子案について

事務局からは、健康日本21(第2次)の中間評価報告書の骨子案も示された。案では、報告書の構成を「第1章 はじめに」「第2章 中間評価の目的と方法」「第3章 中間評価の方法」「第4章 目標の整理と今後の重点課題」「第5章 おわりに~健康日本21(第2次)中間評価の総括」としている。

この日は、「第4章 目標の整理と今後の重点課題」を中心に議論した。事務局は、別表一から四を実現するうえで別表五の各項目の改善が欠かせないものの、現段階での進捗が十分ではないため、別表五の各項目を重点課題とすることを提案。検討事項として‣普及・啓発のあり方について(ターゲットの設定、手法など)‣効果的な取組について‣実施主体(都道府県、市町村、企業、関連団体等)に応じたアプローチの方法‣実施主体毎の連携のあり方について‣好事例の展開の方法について――を挙げた。

谷川武委員(順天堂大学大学院医学研究科教授)は、別表五の休養に関する《睡眠による休養を十分とれていない者の割合の減少》を非常に良い指標であると評価したうえで、「(自分が)睡眠障害に罹患していることを把握していないので、もっと啓発が大事。市町村ができるような睡眠と健康に関する対策事例などが必要」と話した。谷川委員によれば、来年公表予定のICD-11では、「睡眠・覚醒障害」が心の問題から離れて独立した章を構成するなど、国際的にも健康づくりのなかで睡眠を重視する流れにあるという。

津下委員(あいち健康の森健康科学総合センター長)は「個人に対するアプローチ(別表五)と環境の改善(別表四)は連動しており、関係団体や企業、住民などの環境が一緒に動くことで効果を出すことができる。別表四も重要であるというメッセージも必要ではないか」と意見を述べた。別表四の扱いについては、他の委員からも重視すべきという意見が続出した。村山伸子委員(新潟県立大学人間生活学部健康栄養学科教授)は、「別表四の健康格差については当時、本当に格差があるのか分からないなかで設定していたが、その後の研究でだいぶ格差の実態が見えてきている。研究の進展も踏まえたさらなる展開が必要だ」と話した。近藤克則委員(千葉大学予防医学センター教授兼国立研究開発法人国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学評価研究部長)は「子どもの貧困など地域間の健康格差を生み出す要因が分かってきている。目標には入れられないが、今後はそれらの要因についても評価すべきという文言は必要ではないか」と話した。これらの意見に対して辻座長は「健康格差対策の量から質への転換が必要で、具体的な対策を示し市町村などが取り組みやすい形にし、重点項目とすることも必要と思う」とまとめた。

健康日本21(第2次)の報告書は、来年度の前半に最終版が都道府県・市町村に発信される予定となっている。

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