ニュース

【レポート】第7回アレルギー疾患対策推進協議会

9月15日、厚生労働省の「第7回アレルギー疾患対策推進協議会」(座長=斉藤博久国立研究開発法人国立成育医療研究センター副所長)が開かれ、「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針(案)」のたたき台について検討した。

基本指針(案)の構成

アレルギー疾患対策推進協議会は昨年12月に施行されたアレルギー対策基本法に基づき、「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」の策定を目指している。今年の2月に初会合を開き、既に各アレルギー疾患に関するヒアリングなどを終え、6月21日の5回目の会合からは基本指針案の検討が始まっている。前回の会合では基本指針の枠組み(案)と記載すべき事柄(案)を基に意見を交わした。この日は、これまでの議論の内容を踏まえ、基本的指針(案)のたたき台が示された。

基本指針(案)の構成は、基本法の中で定められている基本指針の項目と一致させ、以下のようになっている。

第1 アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な事項
第2 アレルギー疾患に関する啓発及び知識の普及並びにアレルギー疾患の予防のための施策に関する事項
第3 アレルギー疾患医療を提供する体制の確保に関する事項
第4 アレルギー疾患に関する調査及び研究に関する事項
第5 その他アレルギー疾患対策の推進に関する重要事項

第1では、基本法の基本理念に沿い「(1)基本的な考え方」をまとめ、基本法の責務に沿い「(2)国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師その他の医療関係者及び学校等の設置者又は管理者の責務」を記載した。第2、第3、第4では、それぞれの内容を「(1)今後の取組の方針」と「(2)今後の取組が必要な施策」の二つに分けて整理。第5の内容は「(1)アレルギー疾患を有する者の生活の質の維持向上のための施策に関する事項」「(2)地域の実情に応じたアレルギー疾患対策の推進」「(3)災害時の対応」「(4)必要財政措置の実施と予算の効率化及び重点化」「(5)アレルギー対策基本指針の見直し及び定期報告」となっている。

医療現場からの声

わが国ではアレルギー疾患に関する専門知識と技能を持つ医師が偏在し、高レベルの拠点病院は、国立成育医療研究センターと国立病院機構相模原病院などに限られている。この日は、アレルギー専門医の委員を中心に、たたき台の書きぶりの修正を求める意見が相次いだ。海老澤元宏委員(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部長)は、「第3 アレルギー疾患医療を提供する体制の確保に関する事項」の記述に触れ、「アレルギー診療は病院にとって不採算部門の扱いを受けがちで、このままでは日本からアレルギー専門の医療機関が減り、開業医だけでアレルギー診療をサポートする時代が来るかもしれない。それを防ぐためには、ここにもっと具体的で強い言葉がほしい」と求めた。斉藤博久座長も「国立成育医療研究センターでも事情は全く同じ。現場からは『労働基準法すれすれのところでやっている』という声が上がっている」と海老澤委員の意見に賛同し、限られた拠点病院に患者が集中し、医療現場が疲弊している現状を訴えた。

事務局は「基本指針は大きな方向性を示すもので、指針の策定後、医療の提供体制等について具体化して施策に落とし込んでいく作業がある。その中でしっかり議論していく」と答え、基本指針の取りまとめの後に、引き続き協議会かワーキンググループの中で検討していく考えを示した。

自治体、患者会などの声

坂元昇委員(川崎市健康福祉局医務監)は「アレルギー疾患の拠点病院設置をいきなり指針に書き込むのは難しいが、例えば二次医療圏ごとにアレルギー疾患の拠点病院を設ける必要があるというぐらいの方向性を書いてもらえればありがたい」と話した。

武川篤之委員(アレルギー患者の声を届ける会代表理事)は「たたき台の文言では現状のままでよいような印象を受けるが、専門医が減り、採算性を中心に病院運営が行われている中で現状は惨憺たるもの。指針であるからこそ、そのあたりに踏み込んでほしい。このままでは、アレルギー対策基本法ができたのに、われわれ患者が具体的にどのような恩恵が受けられるのかイメージが湧かない」と意見を述べた。

その後も、書きぶりの修正を求める意見が続いた。海老澤委員は基本法の十七条(専門的なアレルギー疾患医療の提供等を行う医療機関の整備を図る)では「整備」という明確な言葉で記載されているにもかかわらず、基本指針のたたき台では、アレルギー疾患医療を行う医療機関の連携体制の「構築を図る」となっている(第3(2)今後の取組が必要な施策 キ)ことを挙げ、「表現が後退していると感じる」と指摘。「『構築を図る』ではなく、『拠点となる医療機関を整備する』と書けないか」と質問した。これに対して事務局は「基本法の十七条に書いてあるので、(専門的なアレルギー疾患医療の提供等を行う医療機関の整備は間違いなく)進めることになる。また、たたき台の書きぶりは指摘の通りで、ここは引き続き検討することを約束する」と応じた。

今井孝成委員(昭和大学医学部小児科学講座 講師)は「食品表示に関する記述で現在行われていることを書くだけでは解決につながらない。できれば詳細に書いてほしい。基本方針には細かいことを書けないのかもしれないが、何が細かくて何が細かくないのかが分からない中では、できるだけ詳細な記述をお願いしたい」と求めた。

省庁間の連携の推進

アレルギー対策は、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、消費者庁など複数の省庁にまたがって進められており、省庁間の連携は必ずしもうまくいっているわけではない。その点を指摘する意見もあり、事務局は「各省庁のウェブサイトを相互リンクし、協議会は引き続き関係省庁と相談しながら進めいく」と話した。

次回の会合で基本的指針の取りまとめを行い、10月中の公表を目指す。

リンク

ニュース

ページトップへ