藤本さんの講演旅行記

web版 講演旅行記-8 通算第26回
山口県山口市

2017-05-17

2016年度最後の講演は、これまた初登場の山口県。個人的に行った事はない。昔、学会が博多であった時に、新幹線で通過しただけだ。それにしても、若い頃はそうやってたまには地方の学会に行ったものだが、今は全く行かない。それどころか、心理学関連の学会は全部辞めちゃって、アウトローの道をひた走っている。あ、でも、昔も行ったのは、精神神経学会とか心身医学会の方が多かったような…。ま、つまり、昔からアウトローだったわけだ。

山口県からのご連絡も、最初は半年前の8月。前回ご紹介した秋田県美郷町より数日先であった。皆さん本当に先々の事までよく計画されるものだと、常々感心している。
今回は、全国保健師長会山口県支部からのお招き。新潟や愛知でこの組織からお呼び頂いたので、最初ほど驚かなくなったが、それでも、その名称に、ちょっとビビる。なんか偉い保健師さんばかりだと思うとねぇ…。何となく叱られちゃうんじゃないかなって思ったりするのだが、気づいたら年齢は私と同等か下の方が多いわけで、いつの間にか自身がそんな風に偉い人たちと同じような歳になっている事に驚愕する。こちとら、昔から中味も肩書きも変わってないし、ダテに年を取っただけの事なのに…。
窓口になられたのは、山口県山口健康福祉センター(山口環境保健所)のYさん。窓口といっても山口県支部長さんだから代表者の方が直接連絡係になられていたわけ。

2月18日土曜日、羽田から空路で山口へ。新幹線にも新山口駅はあるが、時間や乗り継ぎを考えると選択肢は飛行機となるようだ。ところが、この日は飛行機の出発が30分以上遅れ、山口宇部空港に到着してからは、レンタカーでぶっ飛ぶ事になった。
ネットの地図で調べると「県道6号線」というのが、実は「山口宇部道路」という無料の高速道路。空港から会場までを数種類のネット上の地図で検索すると、所要時間が最短で36分、長いと60分という開きがあって、後者だと遅刻になるところだったが、実際には30分余で到着。
目的地は山口市内の湯田(ゆだ)温泉。県庁所在地の市街地の中にある温泉だ。その中で、ちょっと古いが、結婚式もやるような「翠山荘」が会場。テーマは「人材育成の中核を担う保健師のメンタルへルス」。まあ、いつものように何となく終える。

そして、今回、特殊だったのはこの後の懇親会。いつもは基本的に、呼んで下さった保健師さん等と多くて10名程度での飲み会なのだが、今回は、保健師長会全体の懇親会に私もご招待頂いたのである。つまり、私が来ようが来まいが、それに関係なく開催される年度末の懇親会で、県内の退職保健師の送別も兼ねたイベントだったのだ。
会場は私が話した部屋だが、テーブルが結婚式の披露宴会場みたいに変化。いくつもの丸テーブルになり、その、一番偉そうなテーブルに通された。ふく(こちらではフグをフクと呼ぶ)のコース料理を頂き、余興として各テーブルをチームとしてのゲームなどもあった。私も頭の上に本を載せて会場を一周するゲームに参加させられた、いや、参加させて頂いた(;^_^A
退職される方のご挨拶もあって、何だか隅っこのテーブルに居た方が分相応だったと思った。
夜になって少し外を散歩する。夜のホテルの外観はこんな感じ。

また、ロビーには講演に参加された保健師さんも2人いらした。すべて終了した後に日帰り温泉として、入浴されていたらしい。

さて、翌日。
いよいよ、例の如く、観光である。
まずは、「山口サビエル記念聖堂」。あの、フランシスコ・ザビエルの布教を記念した教会だが、正式には「ザビエル」じゃなくて、「サビエル」らしい。この日は日曜なので、教会は信徒のための日となる。

なので、外見だけ眺めて、すぐに退散。しかし、詳細は省略するけれど、ザビエルって名前だけは知っていたが、この聖堂の存在を知って調べた結果、山口で熱心な布教活動をしていた事などを、初めて知った。山口に招かれる事が無ければ、出会う事のなかった知識。

次に向かったのは、今度は仏教、臨済宗のお寺、「常栄寺」である。ここには、水墨画の画家として有名な雪舟(せっしゅう)が作ったという「雪舟庭」という庭がある。

さすがに、なかなか見事な庭であった。庭の周辺にはいろいろなお堂があって、一番上の毘沙門(びしゃもん)堂まで登ったが、結構な傾斜であった。
この敷地内のいくつかある池のひとつ、四明池は、モリアオガエルの産卵で有名らしい。木の枝に卵を産みつける珍しいカエルである。私は映像でしか見た事がないが、白い泡のような物が、木の枝先にびっしり付いて、時が経つと雨水と共にオタマジャクシが下の池に落ちて行くという、珍しい生態のカエルだ。見たかったが、季節が違った。残念。

続いては、曹洞宗のお寺、瑠璃光寺(るりこうじ)に。ここには国宝の五重塔がある。

塔の前の説明書きによると、建立は、1442年というから、575年も前という事になる。それだけでもたしかに国宝級だが、現存する中では日本で10番目に古い五重塔らしく、上には上があるものだ。珍しいのは屋根が瓦ではなくヒノキの皮で出来ている事。そんな屋根のものは今まで見た記憶がない。おそらく時々、屋根をふき替えるのであろう。
瑠璃光寺そのものよりも五重塔の方が歴史が古く、寺の方が後から移ってきたらしい。何だかフシギな感じ。
庭を散策していると、変な木を見つけた。実はかなり有名らしいのだが。

ちょっとわかりにくいかな。正面の木はサルスベリ。その名の通り、猿も滑っちゃうほど、スベスベした木なのだが、上の方に行くと…。あれれ、松の木みたいな幹になっているではないか。
なんと、サルスベリの幹の中から、太いマツが伸びているのだ。おそらく元の木に空洞部分があって、そこから発芽して成長したのであろう。木の太さからして、数十年は経っていると思う。珍しいのでそこそこ有名な木らしい。

次に訪れたのは山口県旧県会議事堂。

なかなか趣のある建物で、中も見学ができる。

実際の自分の生活にとっては、一生無縁な空間という感じがしたが。
そしてそのお隣りは旧県庁舎。

この二つを合わせて、「県政資料館」と呼び、どちらも国の重要文化財らしい。山口県=昔の長州藩で、その後の明治以降の政府を主導した人物が多々出ている所。そういった歴史的な重厚感が感じられる建物であった。江戸時代好きな私には、江戸幕府の終焉を想起させる部分もあり、ちょっと寂しいような気もしたが。

さて、昼食。来る前の下調べで楽しみにしていた瓦(かわら)そば。「長州屋湯田店」に、昼前に入るが、なかなかの混雑。瓦そばは、2人前以上だと、熱した瓦に載って、そのまま出てくるが、一人前だと残念ながら皿で出てくる。

写真のようにそばの上に錦糸卵、そして焼き海苔、レモンの上に紅葉おろし―だが、海苔の下には薄切りの牛焼肉も載っている。そばは、茶そば。焼いてある茶そばなのだ。つまり、瓦を鉄板代わりにして、焼いた物を頂くというわけ。手前の温かいそばつゆにつけて頂く。
まったく味の想像がつかなかったが、見た目よりも穏やかな印象の味。なかなか美味。是非皆さんも味わってみて下され。私は空港で家族に土産として購入したが、今時、ネットでいくらでも買えそうだ。

食後は、空港に向かう途中を海側に寄り道。「県立きらら浜自然観察公園」に立ち寄る。パンフレットなどによると「渡り鳥の交差点」との事。さまざまな渡り鳥が行き交うポイントらしい。私はいわゆるバードウォッチャーではないが、鳥は大好きだ。しかしこの時は多少のガンカモ類しか見かけなかった。

こんな立派なビジターセンターもあるが、敷地内には他にも観察ポイントが何ヶ所かあるみたい。

ヨシ原には、何かのカエルの卵があった。まだ2月である。ちょっと早い。やはり、多少は関東よりも温暖なのかな。

公園を出た後は、宇部の漁港に立ち寄って、帰路につく。

この海の向こうには、何となく四国があるような気がしていたが、地図で見るとそうではなく、九州があるようだ。中国地方の南側の海は瀬戸内海、だから、向こうは四国―という発想だったが、宇部の辺りの海は周防灘、で、向こうは大分県―というのが正解のようだ。お恥ずかしい限りの無知(*_*) どうも西の方はまだまだよくわからない。更にいろいろな所からお声がかかると詳しくなるかもしれないが、まあ、そう簡単には呼ばれないだろう。

―と、言いつつ、実は2017年7月には鹿児島市に伺う事になっている。また今年も、どこに行く事になるやら…。

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