保健師を語る

「人としての在り方が定まれば、保健師像が見えてくる」
瀧口美津子さん

瀧口美津子さんは、国や都道府県の人材育成ガイドラインが出回る中で、多くの保健師が「目指す保健師像」を描けていないことに疑問を抱いたそうです。瀧口さんが語る、人材育成における大切なこととは。

2016-11-10

あなたが目指す保健師像は、どのような姿ですか

「あなたが目指す保健師像は、どのような姿ですか」。そう問いかけられたとき、あなたはどう答えますか。「分からない」「考えたこともない」「自分なりに描いてみるけど、そんな姿でよいのか自信がない」という答えでも、大丈夫。「少し前に描いていた姿と違ってきた」ということになっていても、それでよし。迷い揺れながらも、あなたが目指す保健師像を描きながら、経験を重ねていってほしいと思います。

保健師として28年5か月歩んできた私。落胆も苦悩も、喜びも幸せな時間も、本当にいろいろなことがありました。その道を経て、ようやく次のような保健師像にたどり着いた気がします。

「彦根のまちが大好きで、病気がある人もない人もその人らしく健やかで心豊かに生き生きと生きるために、私(保健師)にできることはないかと、このまち、この地域の健康課題を見出すことに労力を惜しまず、健康課題を見つければ、それを改善しようと専門知識をフルに駆使して行動(施策化・事業化)に移す。失敗を恐れず、信念を持ち、頼まれごとがあれば喜んで駆けつけ、自分自身が明るく元気に生き生きと生きている。援助を求める目の前の人が『どうであると心穏やかに幸せを感じることができるようになれるか』を一緒に考え、嘆く人の心にそっと寄り添いながら、その人が持つ生きる力やその人の未来を信じている。地域活動や個別の援助では、援助を通して最終的に巡り合えるその人の笑顔を陰からそっと確認し、自分自身の中にあふれる安堵感と喜びを感じている。一人の女性としても、それぞれのライフステージで人生を楽しみ、自分自身の身に起こる出来事や、さまざまな人・世界との出会いを通して、人生はいろいろあってよいと思えて自分らしく清々しく生きている」

あなたは、どんな先輩(保健師)に、憧れますか

以前の私は、力を抜いて仕事をすることができず、常に日々熱血的に過ごしていたような気がします。家族のことも大切ではありましたが、もっともっと、自分自身を、家族を、仲間を大切にする働き方もあったのではないかと、今は思っています。

私が憧れる先輩の姿は私自身がこんな先輩でありたいと思う姿。「一人の女性としてその人らしく心豊かに生きていて、笑顔で目の前の人を元気にすることができる。その上で、まちの健康課題を明らかに、職場の事業においては思い切ってスクラップ・アンド・ビルドができる判断力と潔さ、後輩保健師の個々の潜在能力を見出して信じる強さを持つ一方、後輩が『保健師として働く喜び』を感じながらプライベートも大切にしつつ生き生きと仕事ができるように、心配りができる人」です。

今は、保健師の部下を持つ所属ではありませんが、いつか、何かの形で後輩に伝え、後輩を支えることができたらよいなと願っています。

在りたい姿を目指すために必要な知識や技術・専門性、人材育成とは

これらの姿を目指すために必要な知識や技術・専門性は、国・県・市が作成したマニュアル(ガイドライン)にある内容だと思います。しかし残念ながら、現場はそのガイドラインの内容も必要性もほとんど理解できていないままの保健師がほとんどです。私は、ガイドラインはもっと身近で、保健師として迷ったときにパラパラとめくって見直してみることができる、バイブルのようなものであってほしいと思います。
 
保健師は、保健師である前に一人の「ひと」です。家に帰れば、その町に住む一住民なのです。専門知識を身につけようにも、地域に責任を持ちながら仕事をするにも、まずは自分自身が一人の「ひと」としてどう在りたいかを整え、その次に「保健師」としてどう在りたいか、どのような保健師がわがまちで求められているのか、必要なのかを整えれば、おのずと必要な答えが見えて、道筋(方向性)が明らかになると考えています。

人は「生き物」、人材育成も「生き物」です。そのことを認識した上で、育成するほうも、されるほうも、より柔軟に。保健師自身の個性や多様性・価値観の違いも受け止めながら「自分たちはまだまだ輝けるよね」と認め合い、いきいきと仕事ができる、保健師としての専門性がもっともっと発揮できるようになる、わくわくする、そういう人材育成であってほしいと願います。

後輩には、どのような喜びや保健師としての醍醐味を感じてほしいですか

地域の健康課題を見出すことに労力を惜しまず健康課題を見つけ、それを改善しようと専門知識をフルに駆使して行動(施策化・事業化)に移し、結果を評価する一連のプロセスが、何物にも代え難い行政保健師ならではの醍醐味だと思います。

個別支援であれ集団や地区活動であれ、住民と関わることで住民がエンパワメントされていく様子、その結果起こる予期せぬ展開の素晴らしさ。住民が主役で、保健師は黒子に徹する結果得られる何ものにも耐え難い喜び。

行政にいるからこそできること、行政でなければできないこと、民間に委託したほうがよいこと、民間にあればよいと思うこと、それを一つ一つ、かみしめてほしいとも思います。

最後に

夢や願いは、必ず叶います。あなた自身が笑顔を失わないでいられるくらいの力加減で、あきらめず、一人で頑張らず、周りの方々に知恵を借りながら保健師として凛と前を向いて歩んでほしい、いつか「保健師になってよかった」と温かい気持ちを味わってもらえたらと思います。  
  
                          (彦根市立病院地域医療連携室室長補佐)

保健師を語る

ページトップへ