保健師を語る

「誇りと使命感を持ち、臆せず前に進んでほしい」
鎌田久美子さん

今年3月に38年間勤務した福岡県庁を定年退職した鎌田久美子さん。3月までは全国保健師長会会長も務めました。鎌田さんが自身の活動を振り返って思うこと、後輩保健師へのメッセージとは。

2016-06-10

目先のことにとらわれず本質の見極めが大切

福岡県庁では、5か所の保健所、精神保健福祉センター、本庁等さまざまな部署に異動しましたが、任期の終わりにはいつも「やりがいがあり面白かった」と充実感を覚えました。新任期は地区担当による保健活動に従事し、母子・成人から結核・難病・精神保健まで地域保健のすべてを担いました。担当校区に責任を持ち、地域住民の方々と一緒にその地域の目指す姿に向かって活動を展開していく日々でしたが、つらいと思ったことは一度もなく、毎日が充実していました。また、先輩保健師から「目先のことにとらわれず本質をしっかりと見極めること、相対する人間をしっかり見ることが大切」と学んだことは、大きな財産になりました。

忙しくても「やりがい」を見つければ仕事は楽しい
~A(明るく)T(楽しく)M(前向きに)~

中堅期時代は業務分担制となり、主に精神保健分野に従事しました。精神障害者の家族会と共に奔走した精神障害者共同作業所の設置や、地域の医師会や婦人会等と協働した当事者・家族をサポートする「共同作業所を支援する会」の設立は根気の要る苦労の多い仕事でしたが、それだけにやりがいもありました。最後の10年は主に本庁で看護行政に従事しました。県民が受ける看護の質の向上、そのための看護職員確保と研修の充実、「県民が望む場所で療養し、最期を迎えられる福岡県」を目指し、保健所を中核とした在宅医療の体制整備に取り組んできました。特に在宅医療の体制整備は、今でこそ全国で展開されている地域包括ケアシステムが叫ばれる前からの取り組みだったため、苦労も多く大変でしたが、やりがいが大きく楽しい思い出となっています。

リーダーは大局を見る目を養う必要がある

本庁勤務の最後の2年間は保健所副所長、本庁課長職を拝命し、組織のリーダーとして課題に責任を持って取り組むための判断力が求められ、常に緊張感を持って過ごしました。10年間の本庁勤務は、自分自身の成長を実感した大きなターニングポイントの一つとなりました。また、平成26年度から2年間、全国保健師長会の会長を務め、全国の素晴らしい保健師活動に触れ、私自身の視野と思考も広げることができたと感じています。

臆せず一歩を踏み出す勇気と保健師としての誇りと使命感

わが国は、急激な少子高齢化の進展、人口減少、疾病構造の大幅な変化、グローバル化と社会格差の拡大、医療技術の進歩など人々を取り巻く環境が大きく変化しています。この大きな変化の時代に生きる私たち保健師は、先輩から受け継いできた公衆衛生看護の技術を持って、しっかりとその役割を果たさなければなりません。さまざまな難しい局面に置かれたときにも、臆せず大きな一歩を踏み出す勇気を持ってください。そして時代が変わっても、保健師としての誇りと使命感を持ち、「住民の命と健康を守り、住民が安心して暮らせる地域をつくる」ことに、力を注いでください。

現実を変える勇気と変えられないものをしっかり受け止める冷静さ

最後にアメリカの神学者ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉を紹介します。「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ」――この勇気と冷静さを持って、日々の公衆衛生看護活動に邁進されることを願っています。

(公益財団法人 福岡県すこやか健康事業団 福岡国際総合健診センター長)

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