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PHR整備の基本方針案について議論《第2回 国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会》

11月20日、厚生労働省の「国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会」(座長=永井良三自治医科大学学長)の第2回会合が開かれ、PHRの整備に向けた基本方針案が示された。

PHR(Personal Health Record)は、個人がスマートフォンなどの端末で自分の健診・医療情報にアクセスできる仕組み。今年6月に閣議決定された骨太の方針2019にはPHRを含めた健診・検診情報のデジタル化の方策を来年夏までに工程化することが明記されている。また、厚生労働省のデータヘルス改革では保健医療情報を活用したPHRの推進を主要テーマの一つに掲げ、2021年度以降の展開に向けて取り組みを進めている。こうした流れを受け、厚生労働省は今年の9月11日に「国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会」を設置、健康局長の呼びかけにより、学識経験者・有識者、省内関係部局、関係省庁が参集した。そこでPHRの推進に関する基本方針を取りまとめる作業班の立ち上げを決定、作業班班長に宮田裕章構成員(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授)、副班長に岡村智教構成員(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室教授)が就き、具体的作業は事務局と野村総合研究所(委託先)が行うことになった。

2回目となるこの日の会合では、作業班が取りまとめた基本方針の案が示された。表題は「国民・患者視点に立ったPHRの検討における留意事項 ~健診(検診)情報等を中心としたPHRの整備について~」で、PHRとして提供する情報の種別や提供範囲、情報提供・閲覧の在り方を整理している。

PHRの情報提供の仕方については、区分(健康情報、医療情報など)→種別(特定健診、事業主健診など)→発生情報(受診歴、検査値など)→提供情報の順に対象となる情報を絞り込むことを提言。種別→発生情報の絞り込みの際には、エビデンスが確立され診療ガイドラインなどで整理されている情報を対象にする。発生情報→提供情報では、法定の健診情報など既に個人に提供され理解が進んでいる情報に絞る。そのほか、費用負担や各制度への影響を考慮してマイナポータルなど既存インフラを活用すること、個人の保健医療情報の目的外利用や民間事業者を適切に管理することなども留意事項としてまとめている。

作業班班長の宮田構成員は、「取りまとめ案は、今後の方針を示しながら最初のステップを整理したもの。いまやデータは石油に代わり経済を回す存在で、国家主導ではなく国民一人一人がデータにアクセスする権利を持っているという視点を大切にした」と説明。副班長の岡村構成員は、「(PHRの仕組みづくりは)将来の発展性を縛らないような余地を残した上で、今実施しても混乱がないような手堅いものから始めることを考えている。基本的には個人が大事だが、専門家の意見を入れつつリテラシーに関する教育なども必要になる」と話した。

議論では、構成員から民間事業者による個人情報の取り扱いや自社への利益誘導などのリスクを懸念する声が相次いだ。一方、経済産業省の出席者は「民間でないと取れないデータもあり、利用者がデータを入力してくれるアドバンテージもある。民間と医療関係者のコラボレーションがなければサービスの質は上がらない」と民間活力の重要性を強調。規制と競争原理のバランスが課題であることが浮き彫りになった。そのほかにも、遺伝情報搭載の必要性や差別につながりかねない疾病情報のセキュリティに関する意見などが出たが、基本方針の案は大筋において了承を得た。

今後は、自治体健診(検診)、事業主健診、学校健診、民間利活用の各作業班を設置し、来年夏を目処に各健診情報などをPHRとして活用するための工程表を取りまとめる予定だ。

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