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第2回 これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会

4月18日、厚生労働省の「第2回 これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会」(座長=津下一代あいち健康の森健康科学総合センター センター長、副座長=古井祐司東京大学政策ビジョン研究センターデータヘルス研究ユニット 特任教授)が開かれた。同検討会は、健康寿命延伸のための地域職域連携の在り方を検討し、「地域・職域連携推進事業ガイドライン」の改訂を目指している。

厚生労働省では平成11年度から生活習慣病予防を目的として地域保健と職域保健の連携の在り方を検討してきた。平成17年3月には「地域・職域連携推進事業ガイドライン」を策定、平成19 年3月には医療制度改革を踏まえ、これを改訂している。

ガイドラインには、都道府県・二次医療圏ごとに地域・職域連携推進協議会(以下、協議会)を設置することが盛り込まれており、協議会は都道府県(他協議会との合同設置を含む)、二次医療圏ともに9割以上に設置されている。

しかし協議会の年平均開催回数は、都道府県1・6回、二次医療圏1・2回にとどまり(平成30年保健指導室調べ)、地域・職域ごとの健康課題を把握している協議会は、都道府県協議会54・3%、二次医療件協議会41・5%と約半数に過ぎない(平成29年保健指導室調べ)。一方で、健康づくりに関する社会資源の情報交換・有効活用などについて「課題がある」と考えている二次医療圏協議会は61・5%に上った(同上)。

さらに近年は、健康課題が複雑化・多様化するとともに、IOTやAIなどテクノロジーの発展も著しく、地域・職域の問題を取り巻く環境は大きく変わってきている。これらのことを背景に、ガイドラインの改訂を含め今後の地域職域連携推進の在り方を検討する必要性が出てきた。

「これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会」は厚生労働省労働基準局安全衛生部、保険局の協力を得て、厚生労働省健康局長が開催する。検討事項は①健康寿命延伸のための地域・職域連携の在り方②地域職域連携推進事業ガイドラインの改訂――の2つ。3月14日には初会合を開いた。

2回目の会合となるこの日の議事は「地域・職域連携における現状と課題」と「本検討会における論点について」。「地域・職域連携における現状と課題」では、神奈川県産業保健総合支援センターの渡辺哲委員が地域産業保健センターと保健所・市町村の連携について報告した。同センターでは、労働者数50人未満の産業医の選任義務のない小規模事業場の事業者やそこで働く人を対象者として、労働安全衛生法に基づき労働者の健康管理や相談などを実施している。渡辺委員は「これからの地域・職域連携においては、従来の『情報の連携』から『利用の連携』へ進むことが重要」と話し、地域産業保健センターと保健所・市町村が(産業)保健サービスに関するパンフレットを共同で作成し、互いの地域・職域保健事業の利用促進を図ることを例に取った。

2つ目の議事「本検討会における論点について」では、初会合の議論を踏まえて事務局が論点(案)を示した。論点(案)では、「基本的な方向性」として、検討会立ち上げに至った背景を整理。地域・職域連携推進協議会の開催が年1回程度と形骸化していること、前回のガイドライン策定から今日までの間に、特定健診・特定保健指導、データヘルスなどの新たな取り組みが始まり、地域保健・職域保健を取り巻く環境が大きく変化したことなどを挙げた。

その上で3つの論点――(1)地域・職域連携の意義・効果(2)地域・職域連携による取組の促進(3)地域・職域連携推進協議会に求められる機能――を提示した。 

このうち、「(1)地域・職域連携の意義・効果」では、連携によりどのように保健事業が効果的・効率的になるのか、被扶養者、中小企業の従業員など、保健サービスにアクセスしにくい層に必要な地域・職域連携のあり方などを議論する。加えて、特定健診・特定保健指導、データヘルス、健康経営、ストレスチェック制度などの新たな取組を踏まえた時代に即した地域・職域連携のあり方も検討する。

「(2)地域・職域連携による取組の促進」では、先進事例集の策定、国・都道府県の役割、データの共有方法、各機関が有するリソースの共有方法や人材の育成方法などを検討する。

「(3)地域・職域連携推進協議会に求められる機能」では、協議会の構成メンバーに求められる役割、都道府県協議会と2次医療圏協議会の連携の在り方、他の健康関係の協議会(地域版日本健康会議、保険者協議会等)との役割や連携のあり方などを議論する。

また、事務局は二次医療圏協議会を例に取り、協議会の成長イメージをレベル1~3のモデルで示した。レベル1は単に協議会を開催している段階で、多くの協議会はまだこのレベルにある。レベル2は協議会の構成員が課題を共有しデータを分析して具体的な取り組みを行う段階で、レベル3は一つの課題にとどまらず次の課題を探しながらPDCAサイクルに基づいた取り組みを行う段階であるとしている。

この日は「基本的な方向性」および(1)地域・職域連携の意義・効果について意見を交わした。

慶応義塾大学の武林亨委員は事務局の論点(案)に対して、「ニーズの変化は常に起こっており、職域に発達障害の支援などもある。職域・地域のニーズの共有は、論点のどこで議論されるのか」と問いかけた。事務局の武井貞治健康課長は「(1)地域・職域連携の意義・効果のところでニーズも踏まえて考えることになると思うが、どのように論点の中に入れ込めることができるか事務局で整理したい」と答えた。武林委員は基礎自治体の位置づけが不明である点も指摘、これに対して武井課長と津下座長は、基礎自治体の役割の明記は非常に重要なポイントとの認識を示した。

国民健康保険中央会の松岡正樹委員は、「連携の対象者は働き世代が中心と思われる中で、退職者、後期高齢者、生活困窮者まで視野に入れるのか。被扶養者の健康管理はどこが担うのか」と述べ、対象者と主体を明確にすべきとの考えを示した。また、「特定健診・特定保健指導などのメタボ対策だけでなく、がんや難病など、職域・地域を超えた個別の疾病についても共有課題として視野に入れてはどうか」と提案した。

大分県の藤内修二委員は渡辺委員の報告に出てきた「利用の連携」は重要なキーワードであるとした上で、「保健師や管理栄養士などの専門職が大勢いる地域保健サイドが、地域職域連携にもっとマンパワーを投入することが、結果的に将来の国保会計など市町村の保健医療財政に有用であることを理解すべきだ。職域保健サイドも地域職域連携による従業員の健康づくりが有用であることを事業主がもっと理解する必要がある。これらのことを論点の背景に明確に書いてはどうか」と話した。

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