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「保健医療データプラットフォーム」構築に向け、有識者会議を開催~第1回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議~

5月16日、厚生労働省の「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」の初会合が開かれた。データヘルス改革の柱となる「保健医療データプラットフォーム」の構築に向けた、基盤整備の議論が本格化している。

健康・医療・介護情報のビッグデータからなる「保健医療データプラットフォーム」は2020年の本格稼動を目指しており、疾病・介護予防や新たな治療薬の開発など、質の高い医療・介護を提供する基盤となる。現在、国が保管しているレセプトデータは約129億件、特定健診・保健指導データは約2億件もある。それらはすべてレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に格納され、自治体や研究機関による活用も始まっている。また、介護レセプトデータは約5億件、要介護認定データは約4千万件で、介護保険総合データベース(介護DB)に格納されている。巨大なデータであるNDBと介護DBの連結は、2025年問題に向けた効果的・効率的な医療・介護の提供体制への期待から、経済財政諮問会議や「経済財政運営と改革の基本方針2017(平成29年6月9日閣議決定)」でも要請されている。

これらを背景に、2つのデータベースの連結について技術面や法制面の課題を検討するのが、「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」の目的だ。合わせて、全国がん登録DBや難病DBなど、その他の医療データベースとの関係についても検討する。座長には遠藤久夫構成員(国立社会保障・人口問題研究所所長)が選ばれた。

この日、事務局は6つの検討テーマ――①個人情報保護法制との関係②データの収集・利用目的、対象範囲③第三者提供④実施体制⑤費用負担⑥技術面の課題(セキュリティの確保等を含む)――を示した。

個人情報保護については、NDBと介護DBは個人情報を匿名化した上でデータベースとして構築されている。匿名化にあたっては、「ハッシュ関数」を用いる。これは氏名・生年月日などの個人情報から「ハッシュ値」(乱数のようなもの)を生成するもので、生成とともに個人情報を削除しハッシュ値のみを残す。ハッシュ値からは元データを再現できないため個人が特定される心配はない。

行政や研究機関などの第三者への提供については、NDB、介護DBともに、ガイドラインに基づき、有識者会議での議論などを経て公益性が確認される場合のみデータの利用を認める仕組みとなっている。このうちNDBについては、既に高齢者の医薬品使用状況の研究などに生かされている。また、NDBを基にした健康スコアリングレポート(健保組合ごとに加入者の健康状況や生活習慣、医療費の状況について「見える化」し、経営者にレポートする)は、厚労省・経産省・日本健康会議の三者の連携により今年度から始まる。さらに、「NDBオープンデータ」としてネット上に公開されているものもあり、医科診療報酬点数表項目、歯科傷病、特定健診集計結果、薬剤データなどを見ることができる。一方、介護DBの第三者への提供が始まるのは今年の夏以降になる予定だ。

この日の議論では、樋口範雄構成員(武蔵野大学法学部特任教授)が「レセプトのデータは(誰でも見られる)オープンデータがある。一方、介護のデータでは地域包括ケア『見える化』システムが進んでいる。オープンデータということと、この『見える化』の違いは何か」と事務局へ説明を求めた。これに対して事務局は「地域包括ケア『見える化』システムは、地域包括ケアに係る情報を(全国の利用者が)得るための情報ソースを一元化したシステムのことで、介護DBのオープンデータの話とは全く異なる」と説明した。また、「NDBと介護DBの連結の中ではオープンデータの扱いも課題となるので、そうしたことも議論してほしい」と話した。

松田晋哉構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)は「レセプトの主治医意見書の『今後発生することが予想される病態』などはリスクマネジメントの上で非常に重要だ。地域の介護保険の良し悪しを判断することにも使えるので、将来的に取り込めるほうが望ましい」と意見を述べた。

個人情報保護の観点から、データベースの構築における匿名化のリスクを指摘する声もあったが、事務局は「まず何をしたいのかを明確にした上で、セキュリティの確保などそれを裏打ちする技術について検討する、という順序で進めたい」と話した。

武藤香織構成員(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野教授)は、「(データベースを連結することで)国民にとっての利点をできるだけ分かりやすく伝えることと、公益性という視点からデータを提供した医療・介護関係者たちの利点を明確にすることが大切」と強調した。
 
会議はNDBと介護DBの連結についての検討から始め、7月に「中間とりまとめ」を社会保険審議会医療保険部会、介護保険部会に報告する。その後、他のデータベースとの関係を検討し、報告書のとりまとめは秋ごろになる予定だ。

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