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【レポート】ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状に関する厚生労働科学研究事業成果発表会

平成28年3月16日(水)15:00~17:00、厚生労働省にて「ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状に関する厚生労働科学研究事業成果発表会」が開催された。

厚生労働者では、子宮頸がんワクチン接種後の女子に慢性疼痛や運動障害などの特異的な症状が生じたことを受け、平成25年6月14日に子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の一時中止を通知している。今回、接種後の副反応とみられる病態、治療法についての現時点の研究成果について、2つの研究班の代表から発表があった。

[発表1]
「子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究」
信州大学・池田修一さん

研究班は、2013年から信州大学を受診した患者123例のうち98例が、副反応を否定できないものとして詳細を検討した。主な症状は頭痛、全身倦怠感、筋力低下、起床困難などであり、病態は自律神経障害、関節炎、高次機能障害などと診断されている。ちなみに他疾患と診断された例は25例で、てんかん、全身性エリテマトーデス、若年性関節リウマチなど。池田さんは、子宮頸がんワクチンによる副反応の成因や病態は不明な点が多く、発症時期や症状は多様であり、現時点では他科と連携しながら病態に合った治療法を選択することが重要だと話した。そして今後の課題として、①新規治療法の開発②感受性遺伝子(HLA)の検索③モデル動物の作成などを挙げた。

[発表2]
「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究―慢性の痛みとHPVワクチン接種後の痛みについて」
愛知医科大学・内田享宏さん

内田さんはまず、あまり理解が進んでいない「慢性の痛み」に関する最新の知見を紹介した。程度に関わらず慢性痛と“不安や恐怖”には関連性があり、脳が不快な感覚、情動を引き起こすと神経伝達物質などが放出され、それが痛みとして現れる。これは「気のせい」などでは決してなく、神経科学的変化が引き起こされるものだと内田さんは強調する。実際、慢性腰痛患者は脳(灰白質)が縮小するそうだ。灰白質の縮小は、PTSDの患者にも起こることで知られている。こうした機能性障害としての疼痛も理解した上で、今回の子どもたちの痛みを見ていくことが大切であるという。
慢性痛治療という観点から治療を行った結果、身体づくりと心のケアを含めた慢性痛を理解する教育でよくなるケースが多いことが分かった。子宮頸がんワクチン接種の関与が否定できないケース150人は、トレーニングと支持的対応により67%が緩解した。痛みが不変、悪化した者は約33%だった。
内田さんは、痛みがあっても生活できることを第一の目標とし、専門家チーム同士が連携しながら病態からの脱却を目指すことが重要だと結んだ。

(参考:厚生労働科学研究事業成果発表会資料)

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