特集-インタビュー

第19回 国立成育医療研究センター周産期・母子診療センター母性内科
荒田尚子先生、三戸麻子先生が語る
プレコンセプションケア 〜女性の活躍する時代に必要なサポートとは

小児疾病のあった方々へのサポートに!

こうした現状から、プレコンセプションケアセンターの役割があるということですね。

荒田
はい、「チェックプラン」を、卒業や就職、結婚などの機会にお母さんから「自分の体を大切に」というメッセージとして娘へプレゼントしていただけたらと思います。
予防という意味では、医療保険者さんにも、被保険者や被扶養者の健康づくりの一貫して、利用してほしいですね。時代としても女性の活躍が後押しされ、これから働く女性がより増えてきますし。女性本人の健康はもちろん、次世代の健康にもつながるので、長期的に考えれば医療費も削減できますよ。


プレコンセプションケアにはさまざまな側面があるんですね。

荒田
当院がプレコンセプションケアセンターを開設する大きな理由の一つとして、小児の疾病に深く関わっている医療機関ということもあります。
小児の病気は、NICU(新生児集中治療室)の整備、 臓器移植などの治療の進歩など、医療の発達とともに多くの病気が治癒できるようになりました。
その結果、昔は妊孕(にんよう)性を考える段階まで育たなかったお子さんたちが、現在は元気に成長され、妊娠しようという時期にきています。一見すると、健康な女性となんら変わりはありません。でも小児のときにかかった病気の影響に不安をもっています。実際のところ、どんな影響があるのかなどの情報はほとんどない疾患が多いというのが現実です。
こうした状況のなかで、このケアセンターでわかっていることと、わかっていないことを明確にして情報提供し、わからない場合でも全面的にサポートしていく。そして、その方が妊娠されたときには、妊娠の経過などの情報をいただいて蓄積して、次の方のサポートにつなげていくというのはこのセンターの責務だと思っています。

三戸
三戸麻子先生小児科の先生は小児の間は大変よく面倒みてくださいますが、大きくなり、“いざ妊娠したいです”というときに、どう対応したらいいか困ってしまうという現状があるようです。
小児から成人へのつなぎの時期にどう情報を提供していくか。
例えば、避妊の問題です。なかには病気が悪くなるので、この子には妊娠は難しいということも小児科からは本人に伝えきれないこともあるようです。病気の評価はもちろん、今飲んでいる薬を妊娠前や妊娠中はどうしたらいいかなど、そういったことも含めてセンターで情報提供していきたいと思っています。
少しずつの情報ですが、全国からのこうした情報を蓄積していき、将来的には発信できるようにしたいと考えています。情報がなく地方で困っているお医者さんが、センターに蓄積した情報にアクセスして、「こうした病気をもつ患者さんにこう対応すればいい」と情報を得ていただければと。こうした情報の提供が、病気自体の啓発にもなっていくのではと思います。

荒田
当院にきて12年になりますが、新生児医療はとても進歩し、1500g未満でうまれた方が無事成長されてきています。最初のころにうまれた子たちが思春期を迎えていますが、その子たちは生理が早くきてしまう思春期早発症、きちんとこない多のう胞性卵巣症候群や排卵障害などを伴うことがあります。そういう情報はお母さんにも子どもたちにも伝わっていない。
ただ、いままさに、その子たちが大きくなってきたところで、まだ十分なデータがないんです。
世界的にもレビュー数が少しずつでてきていて、私たちも集めているのですが…。一例でも二例でも、うまくいった例があったら、すごくみなさん元気になれるんですよ。こうした方々をサポートしていきたいと強く願っています。


最後にこのサイトの読者である専門職の方へメッセージをいただけますか。

荒田
荒田尚子先生プレコンセプションケアの要素は、多分野にわたります。糖尿病や腎臓病のガイドラインでは、プレコンセプションケアという記述が以前からあります。でもその疾病の専門科からは病気のことは説明できても、肥満はどうなのか、葉酸はどうしたらいいのか、風疹ワクチンは、という話はなかなかでてこないんですよ。医療、行政、教育などは、どうしても縦割りの担当になっています。この縦割りの不都合のなかに周産期がはまっていると思います。ですから、プレコンセプションケアとして、総合的にみていくことがほんとうに大切です。多くの女性とかかわる専門職の方には、ぜひプレコンセプションケアという概念で、サポートしていただければと思います。ちなみに出生時、小児、思春期、20歳代などの体重などの状況をきくと、相手のバックグラウンドがわかりやすくなるかもしれませんよ。


取材後記

多様化した社会で女性の活躍が期待されているなか、妊娠・出産はもちろん、女性特有の疾病や悩みについてトータルなサポートをする場が必要と、荒田先生はプレコンセプションケアセンターを立ち上げられました。そんな荒田先生の使命感にときめき、今回、取材の機会をいただきました。

記事には書ききれませんでしたが、インパクトがあったのが、思春期の食生活が脳を変化させているのではというお話しでした(これは先生の臨床の経験からとのこと)。みなさんの高校時代の食生活はいかがでしたか?

取材時には「5食食べていた」「休み時間はお団子を買っていた」と、とてつもない食欲の話に盛り上がりましたが、自分の脳の変化がかなり心配です…。

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