特集-インタビュー

第19回 国立成育医療研究センター周産期・母子診療センター母性内科
荒田尚子先生、三戸麻子先生が語る
プレコンセプションケア 〜女性の活躍する時代に必要なサポートとは

若い世代への啓発の重要性

具体的に「チェック&エディケーション」とはどんなことですか?

荒田
荒田尚子先生、三戸麻子先生 検診結果のデータをもとに、受診者の方の健康問題についてサポートします。受診者への教育ですね。

たとえば、やせや肥満の問題は、背景に食生活など、生活全体としての問題があります。生活全体としてのお話のなかで各論として、栄養では葉酸についての情報提供も大切ですし、風疹など感染症の知識も重要です。性感染症や、ある意味で避妊ということも入ってきます。たばこ、アルコールについてもお話しします。他にも、家族歴や体格、産まれたときの体重などを聞きながらアドバイスをしています。例えば、家族が閉経前に乳がんや卵巣がんになっている人がおられれば、乳房チェックもおのずと早くから行う必要があります。遺伝性の可能性がありますから。

女性でもいろいろな方がいます。健康な人、病気をもっている人、まだ病気が見つかっていない人。病気をもっている女性の中にも、慢性疾患をもっている人、幼少時から先天的に疾病をもっている人、いまも治療している人。いろいろな人がいます。
健康な人には一般的な教育、リスクのある人にはそれぞれのリスクにあわせた情報をプラスしていくようにしています。


こうした教育をしていくことは大切ですね。

荒田
私は、糖尿病やバセドウ病、橋本病などの甲状腺疾患が専門ですが、いずれもプレコンセプションケアが重要なのです。とくに糖尿病は、プレコンセプションケアがもっとも大切な疾患で、妊娠前に血糖コントロールをすることで先天異常を予防できる、もしくは予防しなければいけない疾患です。
でも妊娠してから、はじめて糖尿病とわかる人がいまだ多くいらっしゃいます。妊娠初期に血糖が高いと高率に先天異常の赤ちゃんを出産されています。糖尿病の人は、家族歴のある人や肥満の人、やせていても小児肥満があった人などが、いつのまにか糖尿病になっているケースがある一定の割合いらっしゃるように思います。


妊娠前の世代は、自分の血糖や血圧を知る機会が少ない世代ですね。

荒田
荒田尚子先生 糖尿病のチェック機能としては、高校、大学、就職時には検尿がありますが、パートタイムなど非正規雇用になってしまうと健診などチェックの機会はなくなってしまいます。主婦になると40歳の特定健診まで何もないということに…。40歳以上のメタボ健診でも、男性の肥満がメインターゲットになりがちなので、女性用の健診が必要だと思います。でも、とくに妊娠を考えた場合、女性では40歳未満の健診が非常に重要であるのに、そこが健診のブラックボックスとなってしまっています。


ブラックボックスの時期と性成熟期とぴったり合致してしまっていますね。

荒田
そうなんですよ。また、女性のがんの問題も重要です。女性は若くしてがんになりますから。20歳台から子宮頸がん、30歳台から乳がんが増え始めます。子宮頸がんワクチン接種は現在日本でうまくいっていないようですし、公的な乳がん検診の対象は40歳以上。J-START※では40歳以上のマンモグラフィとエコーによる検診が有効とされていて、40歳未満は対象ではないのですが、乳がんのピークは45歳くらいです。
日本では、妊娠前や、女性ホルモン投与前か不妊治療前に、乳房チェックをするという習慣がありません。海外では不妊治療前に乳房チェックは必須なのですが…。

※東北大学大学院医学系研究科の大内憲明教授らの研究で、40歳代女性を対象に乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験を実施した。


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