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第十話:エンパワメント(内なる力の賦活化)

わが国の真の課題は「経済不況」ではなく、むしろ「関係性の崩壊」にあるという名言があります。

私は地域の関係性再構築への原動力は、地域のエンパワメントに期待するほかないと考えています。情報化が急速に進行する一方で、逆に地域に必要な身近な情報は入りにくくなり、地域資源も有効に活用されないまま、住民自身が何かを実現するための潜在能力を引き出せる環境にはなっていないように思います。

「エンパワメント」とは、住民や関係機関等とが互いに目指す方向を共有し、その実現に向けてそれぞれの持つ能力を引き出しあうことと言ってもいいでしょう。

そして保健・医療・福祉モデルといったそれぞれの範疇ではなく、住民を主体においた生活モデルとして、住民が自らの力を引き出せるまちづくりの観点からとらえるべきだと思います。

例えば、「がん死亡ゼロ」は保健・医療モデルが目指すものですが、生活モデルでは、「がんになっても安心して暮らせる(死ねる)まちづくり」となり、医療者だけではその実現は無理であり、住民と共に幅広いネットワークが必要となるでしょう。

また国民皆保険制度が安易に医療へ頼ることを促進したり、介護保険制度が地域の支えあいや住民の自立への意欲を低下させたりといったように、制度の運営次第では、かえって住民や地域の持っている力を押さえ込んでしまい、エンパワメントに逆行することも少なくないようです。

外からの力は、内なる力を押さえ込むことにもなりかねないことに留意し、内なる力を引き出すために外からの力を活用する姿勢が大切です。

経済的圧力に屈し、かの悪名高い?!米国型へ進むわが国の医療福祉システムには情けなさすら感じていますが、今後、国がこのまま財政再建に徹するならば、特に地域の保健・医療・福祉関係者は、プライドを持って「住民や地域のエンパワメント」を使命とすべきだと思います。

これまでのお付き合いありがとうございました。

「事件は会議室ではなく現場で起きている」・・・・
国の財政再建を目的とした制度や事業に振り回されることなく、地域に目を向けて、ヘルスプロモーションの理念から、”ブレ”ずに、取り組みの軸足をしっかり固めることが重要です。

みなさんのマネジメント力に心から期待しています。


櫃本真聿
櫃本真聿

愛媛大学医学部附属病院 医療福祉支援センター長
愛媛県各地の保健所長を経て平成14年8月に現職にいたる。

愛媛CATV番組審査員、FM愛媛(79.7Hz)「care of life」のパーソナリティも務める。

―著作―
「ケースメソッドで学ぶ ヘルスプロモーションの政策開発−政策化・施策化のセンスと技術−」(株)ライフ・サイエンス・センター発行
「ヘルスプロモーション時代の 自治体保健専門技術職員の効果的活用」行政発行



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