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保健師としての海外活動
第十話:地域看護リーダー育成を通した国際地域看護の醍醐味

今回で「保健師としての海外活動」がやっと終了する。インドネシアの地域看護に関わって20年以上になるが、2001年の地方分権以来、南スラウェシ州の1保健所のモデル的活動から開始した地域看護リーダー育成のプロジェクトは、17人の地域看護リーダー達のエンパワーメントにより、全県に地域看護コーディネーターが育成され、保健所の地域看護師の育成が推進されてきた。

私はこの間、毎年夏に大学院生の実習を兼ねて現地に事前調査に出かけ、その後日本での1ヶ月間の研修を実施し、半年後の2月には帰国研修員のフォローアップ調査を行ってきた。プロジェクト最終年の昨年は3ヶ月間南スラウェシ州に滞在して、帰国研修員と共に、彼らが育成した県地域看護コーディネーターの活動や各県に設置されたモデル保健所の活動を視察して歩いた。

またこの期間中に5つのリージョン毎に担当の帰国研修員と共にリージョン会議を開催し、県地域看護コーディネーターが活動報告をして問題点等について話し合いを行った。

このような会議を通して実感したのは、帰国研修員がMOTとしてリーダーシップを発揮していることと、各県の地域看護コーディネー達がTOTとして苦労しながら保健所コーディネーターの育成をし、相互に学びあっていることである。

モデル県のコーディネーターは自信を持って活動を報告し、他県のコーディネーターが直面している問題について一緒に考え、助言したり、視察を受け入れたりしている。またモデル県には青年海外協力隊の看護隊員達が派遣されており、地域看護コーディネーターを支援して各県の実態にあった地道な活動をしている。今後、双方が協力してモデル県での活動がグラスルーツまで浸透する共に、他県に拡大することを期待している。

これらインドネシアのMOTやTOTの活動を通して、日本で保健師長としてやりがいを感じた管内保健師連絡会を思い出した。保健師がファシリテーターとなり、各市町村の保健師の活動報告や問題を話し合い、お互いに学び合う共に保健所としての支援や研修を企画していた時のことを。

現在の日本では保健師の役割が問われているが、管内の市町村の実態や問題を把握している保健所保健師こそファシリテーターとして、また地域保健のコーディネーターとしての役割が担えるのではないかと考えたがいかがだろうか。

さて、プロジェクトの総括としては、南スラウェシ州で推進して活動を全国に発信したいと州衛生部、ハサヌディン大学、兵庫県立大学の共催で全国地域看護セミナー・ワークショップを12月に開催した。

セミナーには保健省の看護課長、公衆衛生局長と共に全国の国立大学の地域看護の教員も招待し、各県の衛生部長、県とモデル保健所の地域看護コーディネーター等100人以上が参加。7年間の地域看護リーダー育成のプロセスとシステムについて説明すると共に、MOTとして大学と州衛生部の帰国研修員は、それぞれが果たした役割と共同することの重要性を報告した。

2日間のワークショップでは、参加した県とモデル保健所の地域看護コーディネーター全員がポスター形式で活動発表を行い、熱心にポスターの前でディスカションが行われた。協力隊の看護隊員も各県のポスターの前で自県の活動について説明した。

3日間のセミナー・ワークショップが終了して帰国研修員と共にプロジェクトの評価と、終了後の活動について話し合った。彼らとしては南スラウェシ州で実施してきたことを全国に発信できたことで自信を深め、今後全国から着目されるだろうとの予測から、自分たちで新たなプロジェクトを立ち上げたいと提案してきた。

討議した結果、インドネシアの保健政策"Healthy Indonesia 2010"の2010年を目標に南スラウェシ地域看護推進プロジェクトを立ち上げることになり、8つのプロジェクト目標もきめられた。また、この7年間実施してきたことを基に、現場の地域看護師のテキストを作成したいとの意見が出て、全員が分担して執筆することになった。

この7年間は、私としては昭和20年代・30年代の保健師達の活動を追体験している様な醍醐味も味わうことができた。他方プロジェクトが成功したにのは、大学の教員と州や県の行政機関の地域看護管理者が協力して、州の実態に合った現任研修の実施や、モニタリング・フォローアップ体制を整え、地道に活動してきた成果だと考える。

日本では現在各県に看護系大学があり、保健所や市町村に学生実習を依頼しているが、日本でも教員達と現場の保健師や管理者が協力すれば、地域特性をふまえたモデル保健所やモデル事業の推進できるのではないかと思われる。

「保健師としての海外活動」として10回にわたりインドネシアの地域看護リーダー育成プロジェクトを連載してきました。海外での活動がより身近に感じたり、日本での保健師の経験を生かして海外に飛び出してみようと思っていただければ幸いです。

海外から日本の地域保健や保健師の活動を見直すことにより多くの発見があるのではないかと思います。連載を終えて、2008年7月31日にはインドネシアに出発します。

地域看護リーダー達がどのように自分たちのプロジェクトを進めているのか、モデル県で青年海外協力隊の看護隊員達が地域看護コーディネーター達と共にどのような活動をしているのか楽しみです。



バックナンバー
第一話:「保健師としての海外活動」のコラムを連載するにあたって
第二話:なぜ日本の地域保健や保健師の活動が海外に役立つのか
第三話:困難に直面している時こそ先輩保健師から学ぼう
第四話:インドネシアの地域看護の変遷と地域看護リーダー育成の背景
第五話:「PHCと看護」研修での研修員の反応と帰国後の活動
第六話:日本の保健師の老人保健活動の刺激を受けて老人POSYANDUの活動開始
第七話:モデル保健所の活動からモデル県の活動へと発展
第八話:インドネシアの地域看護師の誕生と地域看護コーディネーターの育成
第九話:インドネシアにおける地域看護コーディネーターの組織的育成のプロセス
第十話:地域看護リーダー育成を通した国際地域看護の醍醐味
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森口育子
森口育子

兵庫県立大学地域ケア開発研究所教授
千葉県保健婦専門学院、仏教大学社会学部卒業。国立公衆衛生院専門課程・研究課程修了。

静岡県保健所勤務時代に青年海外協力隊員としてネパール赴任。保健師学校教員時代にJICAの看護教育プロジェクト専門家としてインドネシアに赴任。
1992年聖隷クリストファー看護大学助教授、96年兵庫県立看護大学教授、2005年より現職。



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