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「ひきこもり」の実態と取り組み
第五話:ひきこもりで暴力発生時の対処例

DVクライシス(引きこもり当事者からの親、兄弟への直接、間接暴力)で駆け込む相談のケースへの家族対応(これは参考例)を紹介する。

この状況にある親は、パニックになっていたり、恐怖感に支配されていたり、放心状態、無念さ、さらにはうつ状態などが混在しているので、両親のどちらの方がしっかりしているかを見定めて対応する。

親の悲嘆や辛さを理解しつつ、ていねいに事情をよく聞くことが大切だが、時には冷静さを取り戻してもらうため、喝を入れることもある。そして、とりあえずの方策を一緒に検討することになる。

家族教室や親の会(家族会)への参加を勧めてみたり、暴力の対象となっている親を親戚、病院などへ一時避難させたり、兄弟がいて、慢性的な暴力がある場合には、兄弟を親よりも先に別居させたりする。

暴力を決して容認せず、「親に手を掛けさせてはならない」と説き、場合によっては警察を呼ぶことも示唆する。親にはそうした毅然とした態度が暴力のエスカレートをある程度は抑止することを理解してもらう。

当事者が大人の年齢であれば、抜本的な『親離れ、子離れ』を視野に入れることも検討してもらい、将来に対し「ビジョンを持とう」と励ます。親離れ子離れは摂理であると説き、親戚、ウィークリーマンション、アパートなどへの避難を選んでもらう。親の精神状態次第では、どちらかの親を一時入院させることも検討する。

両親が避難するケースでは、当座の金子と通帳、印鑑のありかを記した置手紙を当事者宛に書き、地元警察に親の携帯番号を知らせ巡回を頼むよう、親に教示する。訪問サポート士に、一人になった当事者の様子をチェックしてもらうよう依頼するのもよい。

「少々の事件が起きても、大人年齢の当事者の責任であり、別人格である親の責任ではない。オタオタしないこと」「それでこそ彼、彼女の人生となる」と、親には腹をくくる覚悟を迫ることも必要である。また、当事者の暴力は病理が成せる業であり、親だけの努力でどうにかなる問題ではなく、警察、保健所、精神保健センター、市役所、保健センター、病院、民生委員、「親の会」など、社会が対応する問題であることを理解してもらう。

「ひきこもり」では親子の人格分離が自覚されていないことが多く、暴力を容認し、自罰的になっている親もいる。しかし、こうしたことは予後に悪影響を及ぼすものである。DVクライシスは、親であるが故にどうにもならなかった、それまでの状況を抜本的に変換させるチャンスであると説く。

そして、仲間のいる「親の会」への参加を勧める。そこでは、自己を癒し、人生観の視野を広げ、当事者のための中間施設や病院などの情報を得ることができる。

「親の会」への参加から数年かかることも多いのだが、頃合を見て、当事者に向く施設、グループホーム、専門家、病院の情報につなげて行く。ここまでしないと当事者は本当の危機感をもって動くことができず、事態の転換を図れない当事者や家族が大多数である。

こうしたプロセスをへて、親が(特に母親)が元気を出し、よい意味での開き直りがあれば、家族機能不全状態をさらに深める最悪の事態は回避されるはずである。


奥山雅久
奥山雅久

NPO法人全国引きこもりKHJ親の会・代表


静岡県生まれ。少年期より「がん」と闘う。広告マンを経て、1999年12月に「NPO法人全国引きこもりKHJ親の会」を発足。
講演・相談・会運営で多忙な日々を送る。

NPO法人全国引きこもりKHJ親の会
http://www.khj-h.com/



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