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第六話:おもちゃは心の栄養素

子どもには二つの栄養が必要である。
ひとつは身体にとっての栄養であり、これは当然ながら食物をもってなす。

もう一つは心の栄養である。
この栄養素はわらべ歌や民話、絵本、紙芝居、おもちゃなど遊び文化から芸術文化まで、その栄養源の幅は広い。

だから食生活の発育をスムーズに進めるため離乳食は食の世界にだけに必要なのではなく、心の栄養領域にも必要となってくる。

わらべ歌は言葉の離乳食であり、民話は感性の離乳食である。わらべ歌によってどれだけ発語が促され、民話によってどれだけ感性が磨かれるのか。様々なイメージメイキングが子どもたちのイマジネーションに彩を添えるわけである。

そしておもちゃは創造性の離乳食ともいえよう。おもちゃが導火線となって子どもたちの貪欲な創意工夫のボルテージは上がる。

しかし、心の栄養領域には、食の世界のような栄養士や調理師はいない。国家資格がない以上、親や保育士、幼稚園教師は有力候補となる。

また、忘れてはならないのが祖父母や地域のお年寄りの存在だ。お年寄りは民話やわらべ歌、あやとり、折り紙などの伝承遊び、子どもに関する人生儀礼など、それらの引き出しの多さが求められ、かつてのお年寄りはその使命をきちんと果たしてきた。。

子どもの遊びの栄養失調時代には、お年寄りの遊びの知恵と技が必要だ。

また、今やおもちゃは作るものではなくて、買うものだけになってしまっている。クリスマスや誕生日に「おもちゃ、作って」とおねだりする子どもは皆無に近いし、親もおもちゃは買って与えるものだと思いこんでいる。

しかし、おもちゃは子どもたちの手作りの時代もあった。今、60歳代以上の方々は、極まれにおもちゃを買ってもらったにすぎず、ほとんどのものは自ら作りあげてきたものばかりだ。おもちゃの楽しみは「買う」だけでは50%にしか満たない。作ることと相まって100%となる。

現代の子どもたちは遊びの楽しさを半分しか享受できない中途半端な状態だといっても良いだろう。

楽しみをお金で買うことばかりに関心がある子どもたちに、自ら遊びを創り出すエネルギ−の栄養補給をしてあげたい。さまざまな素材や道具にたっぷりとかかわる体験が乏しい子どもたちに、遊びの食材を料理し、食らいつく力を獲得してもらいたい。


多田千尋
多田千尋

芸術教育研究所所長、東京おもちゃ美術館館長、高齢者アクティビティ開発センター代表 NPO法人日本グッド・トイ委員会理事長。

1961年、東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、モスクワ大学系属プーシキン大学に留学。現在、全国3000人を越える玩具の専門家「おもちゃコン サルタント」の養成と、高齢者福祉のQOLの向上を唱えた「アクティビティディレクター」の資格認定制をスタート。専門はアクティビティケア論、福祉文化論、世代間交流論で、早稲田大学など多くの大学で教鞭をとる。

4月には、新宿区と文化協定を結び、東京の四谷で閉校となった小学校に「東京おもちゃ美術館」を開設。中野には、遊びとアートのラボラトリー「アート・ラボ」を開設し、子どもアートスクール、子育て学校、街中子育てサロン、おもちゃショップなどを展開する。

・芸術教育研究所
・東京おもちゃ美術館
・高齢者アクティビティ開発センター



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